「〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告」拝読。
タイトルを見ると、著者は精神医学に恨みでも持ってそうな人物に見えるが、そうではなく。
著者はDSM-IVの作成委員長だった人。
第一線から引退していたが、DSM-5作成の様子に危機感を抱き、この本を書いた次第。
DSM-IV作成後、作成者たちの思惑を超えて、精神疾患の診断が乱発され、製薬会社の広告・営業によって、向精神薬が過剰にばらまかれていったさまが克明に描かれていた。
DSM-5は、それに輪をかけたものになっているだけでなく、問題があるとわかっていながら、発売元の米国精神医学会の金欠を解決すべく、無理やり発行されたとか。
一方的な批判ではなく、精神医学はかくあるべきだという信念と精神医学への愛を感じ、感銘した。
印象的だった文。
P366
>上手に用いられた精神医学は永遠の喜びである
>下手に用いられた精神医学は、危険ないかさま治療である。
性別違和に関しては記載がなかったのは残念だが。
性機能不全の著明な治療者、カプランの治療の「性的代理人」は息をのむほど美しいので、治療効果はてきめんだった、とか。
また、レイプ犯は、刑罰だけでは満期で出所するので、その後は精神疾患として精神病院へ収容を続ける、など興味深い記載もあった。
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