トランスジェンダー

トランスジェンダーを800字以内で説明」という、大学入試問題みたいな原稿依頼の原稿書いたのでとりあえずアップ。800字ちょうどです。


トランスジェンダーとは、transgenderをカタカナ表記したものである。出生時に割り当てられた性別(つまりは身体的性別)から規定される、伝統的な男性役割や女性役割、あるいはジェンダーアイデンティティーの枠から外れた人たちを包括する用語。具体的には、異性装者、性同一性障害のものなどを含む。そのジェンダーアイデンティティのありようは、性同一性障害のように、身体的性別と反対の性別であることもあるし、あるいは「時には男性、時には女性」、「男性でも女性でもなく」、「男性と女性の中間」などさまざまである。この言葉はもともとは、アメリカの異性装者のコミュニティーの指導者であったVirginia Princeによって、1970年代ころより、「身体的性別とは一致しないジェンダーアイデンティティではあるが、性別適合手術までは望まないもの」という意味で用いられ始めた。しかし、その後はより包括的で広範な意味に用いられるようになり、性別適合手術を望むものも含む意味に用いられるようになっている。またこの言葉は、「性同一性障害(gender identity disorder)」「性転換症(transsexualism)」などといった医学者によって命名された医学用語とは違い、医学疾患的な意味合いはない。そのため「自分達は精神疾患ではない」「自分達は障害者ではない」と考える当事者にとっても、用いやすい言葉であり、欧米では広く用いられている。それは、「同性愛(homosexual)」といった医学用語から「ゲイ・レズビアン」という非医学用語が好んで使用されるようになった流れと同様である。しかしながら、わが国では医学用語の「性同一性障害」のほうが、人権擁護の訴えや、医学的治療の正当化に適しているという事情もあり、非医学的用語のトランスジェンダーは、必ずしも当事者が用いることは多くないことが現状のようである。