「性的少数」悩める思春期 「本当のこと話したら 友達いなくなるかも…」

「性的少数」悩める思春期 「本当のこと話したら 友達いなくなるかも…」

 「同性が好き」「自分が男であることになじめない」など、性のあり方に悩む思春期の子どもを支える取り組みが、広がっている。性的マイノリティー(少数者)の当事者らが交流会を開いたり、教師が研修会で学んだりして、子どもたちが孤立することなく成長できる環境づくりを目指している。(堀家路代)
 ◆交流会 孤立防げ
 「本当のことを話したら友達がいなくなると思った」−−。トランスジェンダーであることを公表している福岡市の小学校講師、石崎杏理さん(26)が7月末、北九州市で開かれたシンポジウム「性的マイノリティの子どもたちを理解するために」で、子ども時代を振り返った。
 石崎さんは、小学生のころから女性の体で生まれたことに違和感を持ち、現在は男性として社会生活を送っている。高校生の時、教師や友人が、ゲイのことをちゃかしたり、「気持ち悪い」と言ったりするのがつらかったという。
 文部科学省は昨年、性同一性障害などの児童生徒に配慮するよう都道府県教委に通知したが、悩みを抱える子も多いとみられ、石崎さんは「子どもの権利を守る対策が必要」と訴えた。
 ◆教員も研修会
 シンポジウムは、子どものための専用電話を開設している市民団体「チャイルドライン北九州」が主催。代表の河嶋静代・北九州市立大教授(58)が基調講演し、「同性が好きになった」「合宿時の風呂が苦痛」などの相談が多数寄せられていると話した。
 福岡県立嘉穂東高定時制教諭、橋田洋子さん(59)は、性同一性障害の生徒が入学した際、専門家を招いて教員研修会を開いた経緯を報告。「欠席しがちだった生徒が、学校生活を楽しむようになった」と話し、教師が理解を深めることの大切さを強調した。
 7月下旬には、関西を拠点とするNPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」(電子メール family2006@goo.jp)が、福岡市で会合を開いた。当事者の親が中心となった会で、九州でも支援の場づくりを進める。次回会合は10月23日。
 石崎さんら九州の当事者らのグループ「にじだまり」(ホームページ http://x14.peps.jp/nijidamari/)も、福岡市で定期的に交流会を開いており、次回開催は8月21日。「gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会」((電)03・3492・6071)の交流会も9月25日に福岡市で開かれる。
 河嶋さんは「性のあり方は多様であるという認識を大人が共有することが大切だ。学校現場でも積極的に取り組んでほしい」と話す。

 〈性的マイノリティー
 同性愛者のレズビアンやゲイ、バイセクシュアル(両性愛者)、心と体の性が一致しないトランスジェンダーなどの人々を指す。頭文字から「LGBT」とも表現される。性同一性障害は疾患名で、トランスジェンダーに含まれる。


[読売新聞社 2011年8月7日(日)]