性同一性障害と統合失調症の併存例─新たに発症した統合失調症が既存の性同一性障害に与える影響─

http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/bn/26/02.html
精神科治療学 2011年 第26巻02号
性同一性障害統合失調症の併存例─新たに発症した統合失調症が既存の性同一性障害に与える影響─
塚本 壇  池田 官司  向 裕加  小笠原雅美  齋藤 利和
 本稿では性転換症の診断確定後に統合失調症の診断にも至った男性2症例を報告する。2症例ともに性転換症辺縁群として大きく矛盾はしなかった。しかし統合失調症の重畳により症候性に性転換症をきたした可能性,加えて多様性に富む性転換症辺縁群の経過がさらに複雑化した可能性が考えられた。統合失調症の併存が疑われる場合,持続期間基準を満たした後であっても,治療による統合失調症の安定を十分に確認してから性同一性障害の評価を行う必要がある。性同一性障害統合失調症の併存例では一次性の性転換妄想のみならず,性別違和感を背景とする二次性の性転換妄想や,自我肥大による性別違和感の病的増強についても考えなければならない。性同一性障害の症状や経過の多様性については今後も知見の蓄積が望まれる。
Key words:transsexual desires, gender identity disorder, transsexualism, delusions of sex change, schizophrenia