のちに統合失調症を顕在発症するFTM

論文には当分ならないと思うので、メモ書き。


これまで診たFTMの約500例中、5、6名ほどが、のちに統合失調症を顕在発症。
いずれも、初診時は明白な幻覚妄想や、思考障害は認めず。


顕在発症前の臨床特徴
・ 初診時は20歳代。受診後、数ヶ月から数年ののち発症。
・ 性別違和に基づく抑うつ不安というより、もう少し漠然とした不安感、空虚感、自己存在の不確かな感じを訴える。
・ 性別違和は、さほど強くなく、ホルモン、乳房切除程度を望むが、抑うつ感が強まるとSRSまで求めることもあり。
・ 性指向は、漠然としたバイセクシュアルや、アセクシュアルなこともあり。
 

顕在発症後の臨床特徴
・ 自分の性別や外見などに関する、被害妄想、注察妄想、幻聴が出現。
・ ホルモン開始後や卵巣摘出後のものもいるが、身体治療は未治療のまま発症するものもいる。


治療法
・ ファーストチョイスはエビリファイか。12mg程度で症状軽減することあり。


MTFとの比較
・ 約500例のMTF中、のちに統合失調症を顕在発症した例はない。
・ ただし、初診時より、幻覚妄想や思考障害を認めるケースはあり。
・ また、MTFでは、ホルモン療法後、情動が不安定になるケースはあり。


考察
・ 500例中5,6例なら、発症率1%なので、統合失調症の有病率とほぼ等しく、単なる統合失調症性同一性障害の合併と考えることも可能か。
・ しかし、全例を長期追跡調査しているわけでもないのに、1%はやはり高いとも言える。
FTMでのみ見られるのは何故か?
1. 偶然
2. 統合失調症の前駆症状は女性の場合性別違和として現われるが、男性の場合は現われない。
3. 女性ホルモンは統合失調症の発症に抑制的に働くが、男性ホルモンは促進的に働く(あるいはそのどちらか)。


結語
まだはっきりしたことはよくわからず。
ただ気には留めて置きたい。