男なぜ少ない? 性同一性障害受診

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-04-20_16833/
沖縄タイムス 2011.4.20
男なぜ少ない? 性同一性障害受診
体と心の性が一致しない性同一性障害で、国内では身体的な性別による受診者数の男女比が2対3の割合とされるが、県内では1対4と差がより顕著な傾向があることが分かった。同障害診療の県内第一人者で、浦添市にある山本クリニック院長の山本和儀医師(心療内科)の調査で明らかになった。山本医師は「沖縄の社会性もあり、当事者が声を上げづらいのではないか」と指摘する。(屋良朝輝)

 性同一性障害では、体の性は男性だが心は女性であるMTF(male to female)と、体の性は女性だが心は男性であるFTM(female to male)がある。国際的な統計では、MTFとFTMの受診者割合が3対1とされる。国内では岡山大学などの調査で、MTFとFTMの受診者割合は2対3と報告されている。

 2004年11月の開業から、11年2月末までの同クリニックの性同一性障害受診者数は223人。このうちMTFの人は41人、FTMの人は182人と4倍以上の開きがあり、県内の傾向がみられるという。

 山本医師は、MTFの受診者が少ない理由について、「長男が尊重されたり、トートーメー(位牌(いはい))継承があるなど、沖縄の男性優位の社会性が関係しているのではないか」と、県内の男性が置かれている状況が原因の一つではないかと指摘。「男性としての役割を、家族や親族など周囲から期待されるため、なかなか自分の声を上げづらくなっているのではないか」と分析する。

 一方、FTMについては山本医師は「仕事を持っていて社会的に自立して、男性としてのたくましさがある方が多い。パートナーのサポートなども得やすい状況がみられる」と分析する。

 初診時の年齢を見ると、10代から20代が76%を占める。体と心の不一致に気付き苦しむのは、「小学校高学年から中学生の時期が多い」と指摘。思春期を迎える中で、男女の性別に対する意識がより顕著になることや、制服などにより性別の区別が明確化される時期になるため、自身の状況に違和感を抱くようになるという。

 統合失調症うつ病など、精神疾患を発症する例もあり、山本医師は「本人は、体と心が一致しないことに違和感を覚えながらも、相談できずに悩みを抱えている。数字はあくまで受診者であり、当事者はもっといるが表に出づらい状況がある」と話す。

 「家族や周囲は、ステレオタイプ性役割にとらわれないでほしい。性にはいろんなバリエーションがあり、多様性の中に豊かさがある。当事者が自分らしく、生き生きと生きていけるようサポートしてほしい」と訴えた。