草食化? 欲望は「ムダ」 セックスに嫌悪も

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草食化? 欲望は「ムダ」 セックスに嫌悪も
産経新聞 2月24日(木)18時0分配信


【ボーダー その線を越える時】第2部 性(4)

 女性と付き合ったことも、セックスをしたこともない。肌に触れたいという欲望すら感じない。東京都内の私立大学に通う菊池良(23)は友達から“草食系”と呼ばれる。

 生殖機能を失いながら子供を持つことを望む性同一性障害の患者がいる一方、セックスそのものへの関心を失う若年男性の姿も目立つ。

 菊池は月に1度ぐらい性欲がわき、インターネットのアダルト動画を見る。その度に「ムダなことをした」と後悔する。そんな菊池が今、初めて片思いをしている。年下の女子大学生のことを毎日考える。「一緒にいて、いつでも話せて、向こうも話しかけて、みたいな関係になりたい」。性的な対象として見ることはない。

 平成20年秋。東京都の会社員、沢矢あい(32)=仮名=は、交際中だった大学3年の男性(23)と繁華街を歩いた時、風俗店の看板が目に入った。「社会人になったら行く?」と冗談で聞くと、普段は物静かな男性が必死の形相で叫びだした。

 「ヤダ、ヤダ、ヤダ。男の欲望を抑えられないことは許せない。汚いことだ」

 男性は一緒に泊まっても別々に寝ようとするなどセックスにも消極的だった。1年半の交際でセックスは月1、2回ペース。沢矢は「草食系男子が増えると世の中が無機質になり、子供も減る」と憂う。

 厚生労働省研究班の昨年9月の調査によると、セックスに無関心・嫌悪する男性の割合は2年前と比べ16〜19歳で17・5%から36・1%、20〜24歳で11・8%から21・5%と倍増した。

 調査を担当した日本家族計画協会の北村邦夫(60)は、「セックスに限らず、男女間のコミュニケーションを面倒と考える人が増えている」と懸念する。

 希薄な男女関係を示すデータもある。国立社会保障・人口問題研究所が17年に18〜34歳の未婚男女を対象に行った調査で「異性の友人や恋人がいない」と答えた男性は約52%、女性は約45%。同研究所の佐藤龍三郎(59)は「不安定な経済状況の中で若者がパートナーを見つけて支え合い、カップル内でセックスを含め親密さが高まってくれれば」と期待する。

 一方、動物行動学研究家の竹内久美子(55)はこんな見方を示す。「草食系は子孫を残せず、いずれはいなくなる。どんな時代も子孫を残す者が勝ち残り勢力を拡大する」

 「今は乾燥して肌がかゆくなるので互いの背中をかく」。1月下旬、千葉県浦安市のあべメンタルクリニックを訪れた30代の夫婦に、院長の阿部輝夫(66)はスキンシップの「宿題」を出した。夫婦は結婚して5年余り。1度もセックスをしていなかった。だが2人は「夫婦仲はいい」と口をそろえたという。

 阿部が受けたセックスレス相談は元年の10件から22年は180件と急増。約7割が男性に起因、多くが性欲低下だ。阿部は「純粋に性欲がない。原因は分からない」と説明する。

 「3年も付き合ったのに一度もセックスがなくて寂しい。結婚したらセックスをしてくれますか」

 ネット上の「恋人・夫婦仲相談所」に数年前、20代の女性が書き込んだ。所長の二松まゆみ(50)は「相手も問題意識を持たないと解消されない」と考えており、女性には「結婚するだけでセックスレスは解消しない」と回答した。女性は結局、結婚した。その2年後、女性から二松にメールが届いた。「希望は裏切られた。まだ1回もセックスをしていない。子供もほしいのに」 =敬称略

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