シェイクスピアと処女男装とツンデレ

ヴェニスの商人」のポーシャというヒロインのことがずっと気になってた。


ポーシャは、裁判にわざわざ男装して法律学者としてまぎれこみ、「肉1ポンドは借金のかたに、取ってもいいけど、血は一滴たりとも、取ってはならん」という有名なせりふをはく人物である。
こういう知恵と勇気がある女性なのに、借金まみれのヒモみたいな男性に
「私の半分はあなたのもの、残りの半分はあなたのもの」
とわけのわからんことを言って、結婚してしまうのである。


で、シェイクスピアは、いったいなんで、わざわざポーシャに男装なんかさせたりするんだろうかと疑問に思っていた。
で、「シェイクスピアの男と女」と言う本を読んで、だいぶわかってきた。

当時イギリスは、エリザベス女王の時代。
で、1588年、エリザベス女王はスペインの無敵艦隊と戦うイギリス軍を鼓舞すべき、軍服を着て戦場に現れたのである。
それで、イギリスが勝ったものだから、
p176
>女性的美徳と男性的武勇との結合がひとつの理想的女性像となり、


つまり、男装女性ブームがおきていたわけだ。


で、ポイントは、軍服や法服の男装をするだけではない。
その男装をする女性は処女であることが必要なのだ。


エリザベス女王は実際のところはともかく、イメージとしては「処女王」である。
また、ヴェニスの商人のポーシャも、初夜を迎えるのは、裁判後。つまり男装したときはまだ処女である。


ついでにいえば、男装で名高いジャンヌダルクも、当然処女。


すなわち15,6世紀のヨーロッパには「処女男装萌え」というべきジャンルが存在していたようだ。


で、どうして処女である必要があるかというと、男装してて、いつも男っぽかったり、セックスされまくったりしたら、男としては困るわけだ。
外では男装して勇敢であっても、家に帰ればおとなしい処女であるからこそ、萌えるわけだ。
すなわち、「>女性的美徳と男性的武勇との結合」ということだ。


このように考えれば、聡明なはずのポーシャが、だめ男と結婚したのもよくわかる。
好きな男の前では女は馬鹿になるという考えである。


ついでにいうと、こういうキャラは、最近の言葉で言えば「ツンデレ」というジャンルであろう。
外ではつんつん、俺の前ではデレデレ、というのが理想の女というやつである。


結論としては、ポーシャは、ツンデレの元祖である。