アスペルガーと性同一性障害

GID研究会でも演題に上がっていたが。
かなり難しいテーマ。
理由。

1. アスペルガー自体が診断難しい。
アスペルガー症候群は、疾患概念として必ずしも明確ではない。医師によっても診断基準が違うこともある。また日本では、小児精神医学はこれまで立ち後れており、専門教育も乏しい。そのため、確実な診断が難しい。
 私自身これまで、「アスペルガー症候群」と診断されたものは何人か診てきたが、そのほとんどは、医師により診断が割れている。


2. まして性同一性障害との合併例は診断困難。
 アスぺルガーで性別違和を来すことはあるし、アスペルガー性同一性障害(MTF)では似た症状を示すことも多い。
どこまでが、どちらによるものなのか。
・ 孤立感(相手の気持ちがわからないから?性別違和感があるから?)
・ 運動音痴(MTFでは激しい運動が嫌いなだけ?ゴム跳びが得意なら、アスぺではなくGID?)
・ 特殊能力や固着的趣味(GIDでは友人がいないから自分の世界を作る?)
GIDであれば、孤立や固着的趣味は性別移行が進むにつれ、理論的には減るのではあるが。


3. アスペルガーの場合に治療は?
研究会では、ホルモン療法の話が出たが、アスペルガーの場合では、治療適用があるのか?
性別移行して、QOLが上がるといえるのだろうか。


個人的には、広義のアスペルガー、あるいはアスペルガー周辺群で、性別違和があり、結果的に性同一性障害症状を示す例はそれなりにいる気がする。治療的には、第1段階を慎重にすれば、身体的治療もありか、とも思うが。


以下参考までにアスペルガー症候群のDSMIVTR診断基準


A.以下のうち少なくとも2つにより示される対人的相互作用の質的な障害:
 
 (1)目と目で見つめ合う,顔の表情,体の姿勢,身振りなど,対人的相互反応を調節する多彩な非言語性行動の使用の著明な障害。
 (2)発達の水準に相応した仲間関係をつくることの失敗。
 (3)楽しみ,興味,成し遂げたものを他人と共有すること(例:興味のあるものを見せる,もって来る,指さす)を自発的に求めることの欠如。
 (4)対人的または情緒的相互性の欠如。
 
 
B.以下のうち少なくとも1つによって示される意思伝達の質的な障害:
 
 (1)その強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはそれ以上の興味だけに熱中すること。
 (2)特定の、機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである。
 (3)常同的で反復的な衒奇的運動(例えば、手や指をぱたぱたさせたりねじ曲げる、または複雑な全身の動き)。
 (4)物体の一部に持続的に熱中する。
 
 
C.その障害は社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の臨床的に著しい障害を引き起こしている。
 
D.臨床的に著しい言語の遅れがない(例えば、2歳までに単語を用い、3歳までに意思伝達的な句を用いる)。
 
E.認知の発達,年齢に相応した自己管理能力,(対人関係以外の)適応行動,および小児期における環境への好奇心などについて臨床的に明らかな遅れがない。
 
F.他の特定の広汎性発達障害または精神分裂病の基準を満たさない。