ジョンマネー双子症例の教訓

本日、某所より問い合わせ。

「ジョンマネー双子症例とは違い、女性のアイデンティティになった例を教えてくれ」
とのこと。

お安い御用と、以下のを紹介。

http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/full/102/1/e9

症例の要約

46XY男性として誕生。
生後2ヶ月で、割礼手術のミスで、ペニスを失う。
生後7ヶ月で、睾丸も切除し、女性へと性転換手術。
16歳のとき、造腟術を受ける。
16歳のとき、社会的には女性として暮らし、女性であることに疑いを持っていない。
そのときの本人の話では、子供の頃はおてんばで男の遊びを好んだが、友人は女児だった。
性指向は、空想上は主に女性に魅かれるが、実際の性経験は男女とともにあり。
26歳のとき再手術。
このときは男性と性関係にあったが、手術の数ヵ月後に別れ、その後は女性と性関係。


で、問い合わせの理由は、詳しいことは聞かなかったのだが。
察するところ、ジョンマネー双子症例から
「男女のジェンダーの違いは、脳で決まっているのだから、男女区別するのは当然」
という主張に対して、
「社会的な影響によってもジェンダーは形成される」
と反論したかったものと思われる。

まあ、確かに、ジェンダーアイデンティティの形成がnature(先天的)かnurture(環境で)か、という論争はあるのだが。
社会的ジェンダー論争の材料にされるのは、いかがなものか。

ジョンマネー双子症例からわれわれが学ぶべきものは、ジェンダーアイデンティティが生物学的に早期に決定されているとか、そういうことよりも。
本人の意思に関係なく、ジェンダーアイデンティティや、ジェンダー表現、さらには身体的セックスを強要されることがいかに非人道的なことであるかだと思う。