トランスジェンダーの心理学――多様な性同一性の発達メカニズムと形成

トランスジェンダーの心理学――多様な性同一性の発達メカニズムと形成 」拝読。
タイトルと表紙からは柔らかい印象を受けるが、佐々木氏による、本格的な論文集。
佐々木氏が開発した「ジェンダーアイデンティティ尺度」を用い、トランスジェンダー等におけるジェンダーアイデンティティの諸側面を明らかにしている。


従来の研究は、少ない症例から、研究者が思弁的、時に妄想的に持論を展開していたのに対し、この研究は、尺度を用い、あくまで統計的、量的な研究であるところに特徴がある。
ただ、佐々木氏は臨床経験もあるゆえ、数値が独り歩きせず、その臨床的裏付けも感じられる。
統計のもととなる数も多く、この種の研究としては国際的にみても画期をなすと思われる。


ただし。統計による本格論文だから仕方ないが、数字が多く、理解するのがなかなか苦労する。
せっかく、有用な知見が多数あるので、一般読者にもわかりやすい、文体、内容で、新書か何かでもう一冊書いてほしい。