性転師

「性転師」拝読。

SRSアテンド業者さんたちのルポ。

「性転師」は聞きなれない言葉だが、著者の造語。「師」は、「詐欺師」のように、怪しい職業、ということでつけたとのことだが。

ではなぜ「性転換師」ではなく、「性転師」?

よく読むと6P 、タイトルが「パッポン通りの性天使」と本の中だけでここだけ「性天使」という言葉が。トランス女性の風俗嬢たちのことを指している

この言葉をもじっての「性転師」ということか。

 

タイトルは怪しく、本の表紙の「性転師」である坂田さんの風貌も何やら怪しいが。

読んでみると、実にしっかりした内容。文献をしっかり読み、関係者によく取材をし、主観に偏ることなく、きちんと書かれている。

 

最初、坂田さん、健斗君、横須賀さんと、業界でよく知られた3名が「第一世代」として登場。この3人は私も面識があるが、書かれていることは、私の知ってる範囲では間違いはないし、人物像も、大体そんな感じ。知らないことも多く参考になった。

 

次に「第2世代」(なんかお笑いの話のようだが)で4名登場。彼らの会社は、名前は知っているが、そんなに詳しくなかったので、なるほどそういう人たちか、とよくわかった。

 

笑ったのが149ページ。

岡山大を受診して、

>「日本で受けるべきですよね、先生」

 

外科医(N先生?)答えて、

 

>「タイに行きなさい。」

 

真偽は不明だが。

 

後半、ブルーボーイ、埼玉医大、保険適用、と日本の手術の歴史、現状も正しく記されてあった。

 

本全体としては、筆者はアテンドビジネスについて、肯定も否定もせず、現状を客観的に記す立場に徹していると思うが。

タイトルから考えると、「性転師」の彼らは、トランスジェンダーにとっては「聖天使」である、という考えも実は込められているのかなと思った。

 

読み物として面白く、資料的価値も高い一冊。

 

各アテンド会社の詳細が分かるので、タイで手術を考えている当事者にとって有用性は高いと思うが、コロナで大変なことになっているので、コロナ後には、この本で出てくる会社のいくつかはなくなっているかもしれない。

 

性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち

性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち

  • 作者:伊藤 元輝
  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: 単行本