適合手術受けない性別変更認めず 家裁津山支部 臼井さんの申し立て却下

山陽新聞
http://www.sanyonews.jp/article/484579/1/
適合手術受けない性別変更認めず 家裁津山支部 臼井さんの申し立て却下
 女性に生まれながら男性として生きたいと願う性同一性障害の臼井崇来人(たかきーと)さん(43)=岡山県新庄村=が、法が要件とする性別適合手術を受けずに戸籍上の性別を変更するよう求めた審判で、岡山家裁津山支部は7日までに申し立てを却下した。6日付。

 柴田憲史裁判官は審判書で、性別適合手術を性別変更の要件とする性同一性障害特例法の規定について「憲法に違反するほど不合理とはいえない」と指摘。パートナーの女性と結婚の約束をしている臼井さんが女性として出産の可能性がないとする主張は「独自の見解であり、採用できない」とした。

 7日午前に審判書を受け取った臼井さんは「自分の存在を否定されたようで残念。司法の壁は厚く高いが、性別に関する社会全体の考えを変えていくためにも声を上げ続けたい」と話した。臼井さん側は結論を不服として広島高裁岡山支部に即時抗告する方針。

 臼井さんは、2013年に性同一性障害と診断され、14年に現在の名前に改名。性別適合手術を受けないまま昨年3月にパートナーの女性との婚姻届を提出したが不受理となり、岡山家裁への不服申し立ても却下されていた。同12月、「性別変更のために手術を実質的に強制していることは、憲法が定める自己決定権を侵害している」として、性別変更の許可を求める審判を申し立てていた。




(2017年02月07日 12時56分 更新)


朝日
http://www.asahi.com/articles/ASK282PW8K28UBQU007.html
性別変更に「手術は必須」なのか?

小川奈々、二階堂友紀

2017年2月8日08時18分
戸籍上の性別を変えるのに「不妊手術」を義務づけた性同一性障害特例法は違憲だと訴え、女性から男性への性別変更を求めた家事審判で、岡山家裁津山支部(柴田憲史裁判官)は「手術要件は合憲」と判断し、申し立てを却下した。6日付。申立人側は国家賠償訴訟も視野に、広島高裁岡山支部に即時抗告した。


■家裁支部「手術要件は合憲」と判断

 申し立てたのは、女性の体で生まれ、男性として生きるトランスジェンダーの臼井崇来人(たかきーと)さん(43)=岡山県新庄村。

 臼井さんは39歳で性同一性障害の診断を受け、その後、戸籍上の名前も男性的に変えた。ホルモン投与で声が低くなり、骨格筋が発達するなど男性のような体つきになった。ただ、「本質は手術のあるなしではなく、個人としてどう生きたいかではないか」との思いもあり、卵巣摘出などの手術を受けてこなかった。

 昨年12月、性別変更を求める家事審判を津山支部に起こした。審判では、性別変更の要件の一つに「生殖腺や生殖機能がないこと」を定める特例法について、「身体に著しいダメージを伴う手術を要求するのは、自己決定権を保障した憲法13条に違反しており、無効だ」と主張した。

 これに対して、決定は「(特例法の手術要件は)元の性別の生殖能力が残っているのは相当ではないことから定められたと解される」と指摘。「憲法13条に違反するほど不合理な規定ということはできない」と結論づけた。

 臼井さんは昨年春から、パートナーの山本幸(みゆき)さん(39)と幸さんの長男(6)の家族3人で暮らす。性別を男性に変え、幸さんと異性カップルとして結婚したいと望む。7日、決定文書を受け取り、「当事者にも多様性があり、特例法ではカバーし切れない。手術をして後悔したという声も聞く。法が現実とかけ離れていると感じるが、司法の壁は厚い」と語った。

■受診1.5万人 性別変更2割

 体の性別と異なる性別で生きるトランスジェンダーの中には、手術を望まず、ホルモン投与や服装などで自認する性別として生きる人々も大勢いる。

 日本精神神経学会の調査では、特例法が施行された2004年から12年までに性別への違和感を訴えて受診した約1万5千人のうち、手術を経て性別変更に至ったのは2割だった。手術要件が壁になり、性別を変えられない人も多いとされる。就職や結婚のため、やむを得ず手術する事例もあるという。

 法務省によると、不妊手術が要件とされたのは「元の性別の生殖機能により子が生まれれば、様々な混乱や問題を生じることになりかねない」などの理由からだ。だが、「手術などなしに自認する性別で生きる自由は、基本的人権として尊重されるべきだ」と指摘する専門家も少なくない。

 国際的には「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)」を尊重し、性別変更の要件から手術要件を外す国が増えている。英、米の一部の州、アルゼンチン、独、仏などでは手術は不要だ。世界保健機関(WHO)なども14年、不妊手術の強制は人権侵害だとして廃絶を求める共同声明を出しているが、国内では特例法改正の動きにつながっていない。