9月20日の朝日新聞、神庭亮介氏の「男の娘」の記事と、三橋順子著「女装と日本人」の類似性

9月20日朝日新聞、神庭亮介氏の「男の娘」の記事が、三橋順子著「女装と日本人」の内容と類似している件は、ネットでもニュースになり、twitter等でも、その後も話題となった。
http://news.livedoor.com/article/detail/9285164/
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2014-09-20-1
ただtwitter等の書き込みは、昨今の朝日新聞叩きに便乗しただけのもので、実証的なものは乏しい。
そこで、実際に「女装と日本人」とどの程度類似点があるのか、検証してみた。


朝日新聞の問題の記事は下記の部分。


「古来、日本は異性装に対しておおらかな国柄だったと言われる。古事記にはヤマトタケルが女装して敵を討つ場面があるし、歌舞伎の女形は江戸時代の大スターだった。明治期以降、西洋的な価値観の流入で女装への抑圧が強まったが、戦後の混乱を経て復活。女装に寛容な風土のもと、ビジュアル系をはじめとする独特の文化が育まれてきた。」


以下、「女装と日本人」との比較。

「古来、日本は異性装に対しておおらかな国柄だったと言われる。」
女装と日本人、「序章 日本人は女装好き?」で、P20 「女装している人に対する比較的寛容な意識」P21「日本は、パラダイス」など、章全体でおおらかな国柄であることを説明。ただし本は「寛容」という言葉を用い「おおらか」は見当たらず。


古事記にはヤマトタケルが女装して敵を討つ場面があるし、」
P30-36「女装の建国英雄ヤマトタケル」で詳細に説明。


「歌舞伎の女形は江戸時代の大スターだった。」
P78-90にかけ詳細に説明。P95では「女形は女性のファッションリーダー」と述べている。
ただ「大スター」という表現はなし。


「明治期以降、西洋的な価値観の流入で女装への抑圧が強まったが」
P126-141、「文明開化と異性装の抑圧」で詳細に説明。
P127 「明治の文明開化期における異性装者への新たな法的抑圧」など、多数類似の記載。


「戦後の混乱を経て復活」
「第4章 戦後社会と女装」で詳細に説明。P180「戦後混乱期になると一転」など。


「女装に寛容な風土のもと、ビジュアル系をはじめとする独特の文化が育まれてきた。」
「第4章 戦後社会と女装」の後半、および「第5章 現代日本の女装社会」などで独特の文化について詳細に記載。ただし、「女装と日本人」は新宿女装コミュニティの文化が中心に記載され「ビジュアル系」に関する記載は見当たらない。


結語
いわゆる「コピペ」にあたる、まる写しの文章はみあたらず。
また、「寛容」を「おおらか」、「ファッションリーダー」は「大スター」といくつかの言葉は新聞記事では置き換わっていた。
ただ、「ビジュアル系」以外のすべての項目は、歴史的イベントおよびその解釈は、時系列に沿って、「女装と日本人」と同一内容のものであった。
結局、新聞記事の問題個所部分は


「ビジュアル系」以外の部分は、表現のいくつかの言い換えはあるが、「女装と日本人」を要約したもの、


と私には感じられた。

女装と日本人 (講談社現代新書)

女装と日本人 (講談社現代新書)