性別変更の男性と人工授精の子、親子と認めず 大阪家裁

2013.9.13朝日

http://www.asahi.com/national/update/0913/OSK201309130005.html?ref=com_top6_1st
性別変更の男性と人工授精の子、親子と認めず 大阪家裁

 心と体の性が一致しない障害で、女から男に性別を変えた兵庫県宍粟市の男性(31)が、第三者精子を使った人工授精で妻(31)が産んだ次男(1)との親子関係の確認を求めた訴訟で、大阪家裁は13日、男性の請求を棄却する判決を言い渡した。

トピックス「性同一性障害
 法務省によると、男性のように性別変更し、人工授精により妻が生んだ子は2007年以降で33人。04年に性同一性障害特例法が施行され、性別変更が認められるようになる中で、直接的な血縁関係がなくても法律上の親子だと認める司法判断が出るかどうかが注目されていた。

 訴状などによると、男性は08年3月、特例法に基づいて性別を変え、妻と結婚。精子提供を受けて12年5月に次男をもうけ、本籍地の東京都新宿区に嫡出(ちゃくしゅつ)子(婚内子)として出生届を出した。だが、男性の戸籍を確認した新宿区は「性別を変えた男性に生殖能力はなく、血縁関係は認められない」と判断。次男を非嫡出子として扱い、戸籍の父の欄を空欄にしたため、今年4月に提訴した。

 男性側は「婚姻中に懐胎した子は夫の子」とする民法772条に基づき、結婚した妻との間で生まれた次男とは親子の関係であることは明らかと主張。「性別変更を理由に親子関係を認めないのは、法の下の平等を定める憲法14条に違反する」とも訴えていた。

http://jp.wsj.com/article/JJ10071499056175264316719673342233264178264.html
親子関係認めず=性別変更男性と次男—大阪家裁
 性同一性障害のため女性から性別を変更した男性(31)が、第三者から精子提供を受けて妻(31)との間にもうけた次男(1)について親子関係の確認を求めた訴訟の判決で、大阪家裁(久保井恵子裁判官)は13日、男性の請求を棄却した。

 訴状などによると、男性は2008年、性同一性障害者特例法により性別変更が認められ、妻と結婚。非配偶者間人工授精で09年に長男(3)、12年に次男が生まれ、出生届を東京都新宿区に提出した。しかし、男性に生殖能力がないとして、いずれも非嫡出子(婚外子)として戸籍に記載された。

 男性側は「生殖機能がない男性が人工授精でもうけた子は、嫡出子として扱われている」とし、性同一性障害者と区別するのは違法と主張していた。 

時事通信社


http://mainichi.jp/select/news/20130913k0000e040176000c.html
性同一性障害:性別変更親と人工授精の子 親子関係認めず
毎日新聞 2013年09月13日 12時29分(最終更新 09月13日 16時47分)

 心と体の性が一致しない性同一性障害のため、性別を女から変更した兵庫県宍粟(しそう)市の男性( 31)が、第三者精子を使った人工授精で妻(31)が産んだ次男(1)との親子関係の確認を求めた訴訟で、大阪家裁は13日、請求を棄却した。久保井恵子裁判官は「民法は自然生殖以外の父子関係を想定しておらず、生物学的な血縁関係がない男性と次男の父子関係は認められない」と判断した。男性側は控訴する方針。

 訴状などによると、男性は2008年3月、性同一性障害特例法に基づいて性別を変更、翌月に妻と結婚した。昨年春に次男が生まれ、本籍地の東京都新宿区に出生届を出した。しかし、戸籍に性別変更が記されており、同区は「男性に生殖能力はない」と指摘。次男を結婚した夫婦の子である嫡出子ではなく、非嫡出子として扱い、戸籍にある次男の父親の欄を空白にした。

 性別を変更していない夫婦でも、夫以外から精子提供を受けた非配偶者間人工授精(AID)で生まれた子はいるが、役所の窓口では精子提供の有無が確認できないため、実際は嫡出子として扱われている。訴訟では血縁関係がなくても法律上の親子関係が認められるかが争点だった。

 判決はまず、「妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する」とした民法772条について、夫と妻の性的交渉で妊娠した子であることを前提にしたものだと解釈した。

 そして、男性の場合は、性別を変更したという戸籍の記載があり、「次男が男性と妻の性交渉で妊娠した子でないことは明らかで、民法の『推定』が及ばない」と判断した。

 判決は、AIDが生殖補助医療として広く実施されており、「夫の同意を条件に親子関係を認めることは立法論としては十分考えられる」と言及した。しかし、「こうした立法がない以上、男性と次男の親子関係は認められない」と結論付けた。

 法務省によると、04年の性同一性障害特例法の施行後、性別を変えた男性の妻が人工授精で子どもを産んだ例は33例あるという。

 男性と妻の間には、第三者精子提供で長男(3)も生まれている。長男も嫡出子と認められず、男性は戸籍の訂正を申し立てる家事審判を起こしたが、1、2審とも退けられ、最高裁で係争中。 【渋江千春】


http://mainichi.jp/select/news/20130913k0000e040177000c.html
親子関係認めず:原告男性「性同一性障害者だけを差別」
毎日新聞 2013年09月13日 12時35分(最終更新 09月13日 12時59分)

 第三者精子を使った人工授精で妻(31)が産んだ次男(1)との親子関係の確認を求めた訴訟で、大阪家裁から13日、請求を棄却された兵庫県宍粟(しそう)市の男性(31)は判決後、大阪市内で記者会見を開いた。男性は判決について「そんなに血のつながりが大切なのか。長男も『僕のパパはパパだけだ』と言ってくれている。結局は性同一性障害者だけを差別していると強く感じる」と憤った。

 自分が死んだ後も妻を支える存在がほしい−−。副作用の危険もある男性ホルモンの投与を生涯受ける男性は、妻との子を望んだ。妻が妊娠すると検査に付き添い、生まれた長男や次男を抱っこした時には「これから自分がこの子たちを守る」と決意したという。

 今でも自ら毎日、2人の子どもを風呂に入れ、おむつを替え、絵本を読む。「愛情を持って育てていることが一番の親子関係ではないのか」と思いを語った。

 判決は第三者精子提供による人工授精(AID)で生まれた子どもについて、民法772条の嫡出推定が及ばないとした。男性は「民法がAIDを想定していないというのは考えが古すぎる。新しい家族の形が増えている。裁判官も一歩踏み出すべきじゃないか」と話した。【内田幸一】