性別変更男性の子「非嫡出子」=戸籍訂正の申し立て却下−東京家裁

時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012110200668
性別変更男性の子「非嫡出子」=戸籍訂正の申し立て却下−東京家裁
 性同一性障害のため女性から性別を変更した大阪府の男性(30)と妻(30)が、第三者からの精子提供による非配偶者間人工授精でもうけた長男(2)を、東京都新宿区が法律上の夫婦の子ではない非嫡出子(婚外子)として戸籍に記載したのは違法として、訂正の許可を求めた審判申し立てについて、東京家裁(松谷佳樹・家事審判官)は2日までに、「男性の生殖能力がないのは明らかで、嫡出子とは推定できない」として却下した。
 代理人弁護士によると、性別変更した男性と妻の子について、嫡出子としての記載を求めた初のケースだった。
 松谷審判官は、非嫡出子とした記載は客観的な事実に合致しており、訂正する理由はないと判断。性同一性障害者への差別だとした男性側の主張については、「戸籍上の処理は、あくまでも客観的に嫡出子として推定されるかどうかという事実認定の問題だ」として退けた。
 審判によると、男性は2008年に性同一性障害者特例法に基づき性別を変更し、妻と結婚。09年に長男が生まれ、男性は今年、新宿区に嫡出子として出生届を提出したが、区は父の欄を空欄とし、長男を非嫡出子とする記載をした。
 記者会見した男性は「納得できない。これまで訴えてきたことは何だったのか」と話した。(2012/11/02-18:49)

                                                                                                                                                              • -


http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012110201001635.html
性同一性障害夫婦の子どもの戸籍訂正認めず 
2012年11月2日 17時37分

 

 性同一性障害のため戸籍の性別を女性から変更した夫(30)と妻(30)=大阪府東大阪市=が、第三者精子提供で妻が出産した男児(2)の戸籍について父親欄を空白にされたのは差別と訴え、訂正を求めた審判で東京家裁は2日までに、「憲法が禁じる差別に当たらない」と申し立てを却下した。10月31日付。

 法務省によると、性同一性障害で性別を変更した夫と妻の子の戸籍に関する司法判断は初。

 民法は妻が婚姻中に懐妊した子を「夫の子と推定する」と規定するが、松谷佳樹審判官は「男性としての生殖能力がないことは戸籍の記載から明らかで、夫婦の嫡出子とは推定できない」と指摘した。

(共同)

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00234667.html
FNN
性同一性障害の夫婦の子ども、父親と血縁関係がないとの司法判断

性同一性障害で女性から男性に性別を変えた父親。妻が産んだ子どもは、わが子とは認められなかった。
前田 良さん(仮名・30)は午後3時すぎ、「悔しいとか、怒りの感情も...、当然湧きますが、それよりも悲しい気持ちでいっぱいです。やはり、新しい家族の形は、この国には、受け入れてもらえないのでしょうか」と、涙ながらに訴えた。
記者会見をした理由は、2歳の息子をめぐって、東京家庭裁判所が下した判断にあった。
東京地裁は「男性としての生殖能力がないことが、戸籍記載上から客観的に明らかであって、夫婦の嫡出子としては推定できない」と判断した。
東大阪市の自宅で、仲良く息子と戯れる前田さん。
妻(30)がおなかを痛めて産んだ子ども。
しかし今回、裁判所は、前田さんと子どもに血縁関係がないとして、法律上の父親と認めなかった。
前田さんは女性として生まれ、20歳の時、心と体が一致しない「性同一性障害」と診断され、戸籍を女性から男性に変更した。
その後、今の妻と結婚し、3年前、第3者から精子の提供を受け、男の子をもうけた。
前田さんは「性別は戻れた。やっと戻れてほっとした。子どもが生まれた時は、もう喜びしかない。うれしくてうれしくて仕方がなくて、子どもを抱いた時に、やっと僕も父親になれるというか、お父さんという立場になれると思った」と語った。
しかし、子どもを2人の嫡出子として提出した出生届は、受理されなかった。
現在、日本では、不妊治療をして、夫婦が第3者から精子の提供を受け、子どもを設けた場合、本人が申告しないかぎり、役所ではわからないため、出生届はそのまま受理され、夫は戸籍上父親と認められる。
しかし、前田さんの場合は、性別を変更したことが戸籍に残っていたことから、遺伝的なつながりがないことが明らかだとして、役所は親子と認めなかった。
前田さんは「せっかく喜びに満ちた日々が送れると思ったら、一夜にしてドン底に落とされた」と語った。
同じように、親子の関係が認められなかったケースがある。
子宮頸がんと診断され、子宮の全摘出手術を受けたタレント・向井亜紀さんと夫・高田延彦さん。
向井さんは、夫の遺伝子を残したいと代理母出産の道を選択した。
2003年に、双子の男の子が誕生した。
しかし、向井さんは2006年10月、「お役所に行って、『わたし、母親じゃだめなら、父親になれませんか? 性別が女なので、父親になれないなら、親になれませんか? 母という字がついていなくてもいいので、親じゃだめですか?』と聞いたことがあったんですけれども」と語った。
そして2007年に、最高裁は「卵子を提供した女性と、代理出産で生まれた子どもの間には、母子関係は認められない」などとして、役所が出生届を受理しないことを認めた。
戸籍上も、自分を親と認めてほしい。
性同一性障害のため、戸籍を女性から男性へと変え、第3者の精子で子どもをもうけた前田さん。
今回、その長男について、「婚姻届を出さない夫婦の間に生まれた子と記載。父親の欄を空白にした戸籍」の訂正を求めたが、初の司法判断の答えは、「血縁関係がない」として、前田さんを父親と認めないものだった。
前田さんは「性同一性障害が生きていくうえで、特例法があるにもかかわらず、結局は、もともとの性で扱う、当然だという日本の国の実態が、この嫡出問題となっていると思う。(息子に)『却下だって、駄目だったよ』と言うと、こっちを向いて、ニコッとして、両手を僕の背中に回してギュッと抱きしめて、『パパ』と言ってくれました」と語った。
第3者の精子で生まれ、実際には遺伝的なつながりがなくても、それが役所でわからなければ親子と認められ、一方では、今回のように届け出が受理されないケースであるという事態。
医療が進む一方、法的な議論の深まりが急がれる。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121102/k10013207521000.html
NHK
性同一性障害の嫡出子認めず 東京家裁
11月2日 16時51分「性同一性障害」と診断され戸籍の性別を変えた夫が、妻との間に人工授精で生まれた子どもを法律上の夫婦の子として認めるよう求めた審判で、東京家庭裁判所は「婚姻届が出されていても、このケースでは法律上、夫婦の子どもと認められない」という決定を出しました。

心と体の性が一致しない「性同一性障害」と診断されて、戸籍の性別を女性から男性に変えた30歳の夫とその妻は、第三者から精子の提供を受けて人工授精で子どもを出産し、ことし、新宿区役所に出生届を出しました。しかし、法律上の夫婦の子である「嫡出子」と認められなかったことから、家庭裁判所に審判を申し立てていました。
東京家庭裁判所の松谷佳樹裁判官は2日までに、「性別が変わり、婚姻届を出したといっても、夫は子どもを作ることができないため、このケースでは法律上、夫婦の子どもと認めることはできない。戸籍はあくまでも外形的に夫婦の子であるかどうかを判断するもので差別ではない」と指摘し、夫婦の申し立てを退けました。
会見で夫は「『差別ではない』と言うが、国にも裁判所にも差別されたと感じ、悔しさと悲しさでいっぱいです。夫や父親として生きていけるよう闘い続けたい」と話し、東京高等裁判所に抗告する方針を明らかにしました。


http://mainichi.jp/feature/news/20121103ddm041040175000c.html
性同一性障害:性別変更、「父」と認めず 夫婦、即時抗告へ−−東京家裁

毎日新聞 2012年11月03日 東京朝刊


 心と体の性が一致しない性同一性障害のため戸籍の性を女性から変更した東大阪市の会社員の男性(30)とその妻(30)が、第三者から精子の提供を受けてもうけた男児(2)について、会社員を父と認めないのは不当だと訴えた家事審判で、東京家裁(松谷佳樹家事審判官)は31日、夫婦の申し立てを却下する決定を出した。夫婦は決定を不服として即時抗告する方針。

 会社員は08年、性同一性障害特例法に基づき性別を変更したうえで結婚。翌年、人工授精で男児が生まれた。出生届を出そうとしたが、実子と認められなかったため取り下げ、無戸籍の状態が続いていた。

 夫婦が今年1月、本籍のある東京都新宿区に改めて会社員を父とする出生届を出したところ、同区は職権で父親の欄を空白にした戸籍を作った。このため、夫婦は3月に戸籍の訂正を求める家事審判を申し立てた。

 決定によると、家裁は「会社員は特例法に基づいて男性に性別変更したので、男性としての生殖能力がないことは戸籍の記載から客観的に明らかで、嫡出子(実子)とは推定できない」と判断。このような夫婦の場合は「特別養子縁組をすれば、子の法的保護に欠けるところはない」とした。

 2日の記者会見で、会社員は「特例法で男として扱うことにしたのだから、父としても同じ扱いを受けたい」と述べた。【丹野恒一】

==============

 ■解説

 ◇「親子」明確化、法整備が急務

 民法772条は「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(嫡出推定)と規定している。仮に実子としない戸籍を作ろうとするなら、嫡出否認の裁判を起こす必要がある。しかし今回の決定は性同一性障害で性別変更した父の場合は裁判をするまでもなく法的な父子と認めないとした。

 申し立てで夫婦が問題としたのは、生まれつきの男女の夫婦との違いだ。男性に不妊の原因がある場合に精子提供を受けて行う非配偶者間人工授精(AID)では、出生を届け出る際、AIDで生まれたと言う義務はないため、遺伝的つながりはなくても戸籍上は実子だ。一方、性同一性障害で性別変更した場合は、戸籍にそれが分かる記載があるため実子にならない。生殖医療と性同一性障害に詳しい石原理・埼玉医科大教授は「生殖医療の発達で、さまざまな家族のかたちが生まれている。親子関係を明確化する法整備を急ぐべきだ」と話す。【丹野恒一】