DSM-5,paraphilic disorderに異議あり1.

DSM-5では「paraphilia」が「paraphilic disorder」に変更された。
これは、性嗜好の偏倚(paraphilia)だけでは、精神疾患とせず、それが精神疾患閾値に達してはじめて「paraphilic disorder」(パラフィリア障害)として、精神疾患とみなすという考えに基づく。


この変更は、一見したところセクシュアリティの多様性に配慮した進歩のように思えるが、よく考えると曲者だ。


パラフィリアには犯罪系と非犯罪系があるが、非犯罪系を今日は考える。
非犯罪系の代表としては異性装障害がある。
異性装での興奮だけでは疾患ではなく、基準B「その空想や性的衝動や行動のために、臨床的に著しい苦痛または対人関係、職業、他の重要な領域における機能の障害が生じている。」を満たして、はじめて精神疾患となる。


でも、苦痛の有無は、内面化されたフォビア(自分への偏見)の問題である。
たとえば、明るく女装する男の娘は疾患じゃないが、罪悪感を持ってひそかに女装する中年男性は疾患となる。
なんか変だ。


あるいは、女装に理解ある奥さんとなら、対人関係の障害は生じないが、女装反対派の奥さんとなら夫婦関係の危機となり、精神疾患になり。
なんか変だ。


まあ、精神疾患が、社会的文脈の中に存在するのは宿命でもあるが、それにしても、苦悩や対人関係の障害の有無は、疾患の本質から離れている気がしてならない。