身体統合同一性障害(Body Integrity Identity Disorder)と性同一性障害の理論的臨床的相似


昨日の文献とほぼ同じ内容のLawrence AA.の文献があったので翻訳。
こちらのほうがより具体的で趣旨がわかると思う。
Clinical and theoretical parallels between Body Integrity Identity Disorder and Gender Identity Disorder.
http://www.annelawrence.com/biid-gid_abstract.pdf


身体統合同一性障害(Body Integrity Identity Disorder)と性同一性障害の理論的臨床的相似


First(2003)が身体統合同一性障害(Body Integrity Identity Disorder:BIID)と命名した四肢切断の欲求は、パラフィリア(四肢切断愛)とみなされることがある。BIIDは、いくつかの点で、DSM-IVでは性同一性障害GIDと呼ばれる、gender dysphoriaや性転換症に類似している。BIIDやGIDを有する人は、共に強い身体違和を持ち、自分の身体を変更するための外科的治療を求める。BIIDもGIDも最初はパラフィリアとしてみなされ、共に高いパラフィリア的興味の併発と、男性での高い発生率がある。しかし、BIIDやGIDを有する人は、パラフィリアとしての説明は、彼らの体験を表すには不十分だという。BIIDを有する人のほとんどは、四肢切断者への性的興味を認め、GIDを有する人の多くも、自分たちがなりたいと望むタイプの人間へ、性的な魅力を感じる。一時的に四肢切断者の外観と役割を演じたいものを「pretenders(まねもの者)」と呼ぶ。彼らとBIIDの関係は、GIDとTVとの関係に相当するであろう。
 GIDがある男性は、通常、女性だと想像することで、性的に興奮したという経験を語る。この性的関心をBlanchard(1989)はautogynephilia(自己女性化性愛)と呼んだ。米国でMTFのSRSを現在受ける人の多数は、このような経験を語る(Lawrence,2003)。四肢切断愛とBIIDの関係は、GIDと自己女性化性愛との関係に相当するであろう。FreundとBlanchard(1993)は自己女性化性愛は性的対象標的の障害を反映していると示唆した。すなわち、女性に魅力を感じる男性は、また、性的興味の対象である女性に体を似せようと、身体を一時的あるいは永久に変更するという考えに魅力を感じる。性的対象標的の障害は、ゲイ男性や小児愛者においても記述されている。四肢切断愛は異常な性的対象嗜好(四肢切断愛)と、性的対象標的障害の交差を代表しているのかもしれない。
 性別違和はあるが、自己女性化性愛的な性的興奮は否定する男性の中には、自己女性化性愛的な内容の刺激に対して、身体的な興奮を示す場合がある。このような否定は、自分自身を社会的に望ましい人物に見せようという傾向と関連する。私の仮説では、BIIDを有する男性で、四肢切断愛を否定するものは、四肢切断愛的な内容の刺激に対し、身体的には興奮し、おそらく社会的に望ましい人物に見せようとしてるだけと思われる。パラフィリア的な性的興味を緩和する薬物である、SSRIや抗アンドロゲン剤は、BIIDに有効な場合もある可能性がある。GIDを有する男性における経験からは、自分の身体を変更したいというパラフィリア的欲求を述べるものに対して、外科手術はしばし有効となりうることを示唆する。