DSM-5案におけるパラフィリア1.

DSM-5案における主たる変更の第一は、「paraphilia」と「 paraphilic disorder」と2つの概念に分けたことである。
paraphiliaを「性嗜好異常(DSM)」や「性嗜好障害(ICD)」と翻訳している日本語では、「paraphilic disorder」の日本語訳は「性嗜好異常障害」、「性嗜好障害障害」などとなり、その概念は、分かりにくいものがあるかもしれない。しかし、もともとの「paraphilia」には「異常」や「障害」といった意味はそれほど強くないようである。
すなわち、性嗜好が一般的でないものを総称して「paraphilia」と呼び、さらにその中で、精神医学的関与を必要とするものを「paraphilic disorder」と呼ぶ、という考えである。診断基準的には、基準A (基準A:少なくとも6ヶ月間にわたる、1)人間ではない対象物、2)自分自身または相手の苦痛または恥辱、または3)子供または他の同意してない人に関する強烈な性的興奮の空想、性的衝動、または行為の反復である。)を満たすだけでは、「paraphilia」である。そこに診断基準B (行動、性的衝動、または空想は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域の機能における障害を引き起こしている。または、他者に危害を与えている。)もさらに満たして「paraphilic disorder」となるということである。
たとえば、楽しみで女装をし、特にそのことに苦痛や障害がない場合は、「transvestite」であっても、「Transvestic Disorder」にはならない。
具体的病名としては、Exhibitionistic Disorder、 Fetishistic Disorder、 Frotteuristic Disorder、Pedophilic Disorder、 Sexual Masochism Disorder、 Sexual Sadism Disorder、Transvestic Disorder、Voyeuristic Disorder、と、すべてdisorderがついたものに変更されている。