4万6000人に関する考察 2。

次に考えるべきは
「発症率は生年で変わらないと考えられることから、」としている点。
そうだとすると、実際には生年ごとに患者数が異なるというデータの事実をどう解釈するかが問題となる。


一般的な確率統計的発想では、そういうばらつきはよくあることなので、平均を取ることで、代表値と考える。
しかし、この研究では、1985年生まれの最高値を代表値として計算している。
その理由を「若年者や高齢者を中心に未受診者も相当数いる上」としている。
若年者はともかく、高齢者の未受診者が相当数いるという推測の根拠が不明だ。
FTMの場合は、受診したくてもできない理由としては、家族の反対だとか、経済的理由が多い。
そういう理由は30,40歳となれば、かなり解決する。
しかし、中高年で受診するFTMはさほどは多くはない。
そうなると「若年者や高齢者を中心に未受診者も相当数いる上」という推測は無理がある気もする。


また、最高値を代表値にするという方法がなりたつのなら、最低値を代表にするという考えも成立しうるかもしれない。
その場合、性同一性障害が多い世代の理由は
「本当は性同一性障害でないものが多数含まれる」
という推測も成り立ちうる。



ただ、どちらの考えも、あまりに推測の部分が多すぎると思われる。
まず見るべきは目の前に出されたデータという事実である。
「発症率は生年で変わらないと考えられることから、」
という推測ではなく、
「20代に多く、その後は減っていく」
という事実から、考察を積み重ねるべきだろう。


先日のコメント欄にも書いたが、1985-7年生まれは、金八、ラスフレ世代である。その影響はあるだろう。
ただ、金八前からも、あるいは海外での統計でも、
FTMは20代前半に受診者のピークがあり、
MTFは20代後半から、30代前半に受診者のピークがある。
つまり、マスコミの影響とは関係なく、若者受診が多いというのは臨床的特徴なのである。


明日以降に続く。