子供のいる性同一性障害者

下の新聞記事への突っ込み。

まず、


GIDの日本人は全国で数千人から数万人で、うち子供をもうけたのは1割未満とされる。


について。


5,6年前の統計では。
川崎メンタルクリニックにて。
FTM55名中0名.MTF54名中10名。


2004年末岡山大学統計
(モダンフィジシャン2005年25巻4号)http://d.hatena.ne.jp/annojo/20050409/p1
FTM312名中7名.MTF215名中38名。


私の約700名の記憶の印象からは(正確な統計ではなし)。
FTM1-2%(SRSまでしたものは、いないのでは)
MTF15-20%(SRSまでしたものある程度いる)


以上より、FTMで数%、MTFで20%弱、合計で10%前後、ということでしょうか。


しかし、以上の数値は医療機関受診者の中の数値。
新聞記事では
GIDの日本人は全国で数千人から数万人で、うち子供をもうけたのは1割未満とされる。


医療機関受診者は現在約5000人。GIDの日本人を「数万人」と数えた場合、医療機関を受診していないものを含むために、子供のいる割合は不明。
子供がいる場合のほうが、医療機関を受診しにくいと思われるので、「数万人」と数えると、10%以上いる可能性もあり。


次に
>「子どもがいるのは、まだGIDという概念が世間に浸透していなかった時代に結婚適齢期を迎えた現在40−50代の人たち。30代以下で結婚歴のある人は少ない」と指摘している。


について。
統計的データは不明。
ただ臨床的経験からは、子供のいる当事者はやや40代以上に多い印象はあるが、30代20代もある程度の数はいる。


また、特にMTFにおいては、DSMの記載にもあるように、症状経過において、成人期中期に徴候化する経過は多く存在する。
この遅発例においては女性に性的魅力を感じる傾向が強い。
すなわち、「女性に性的魅力を感じ結婚」→「その後性同一性障害の兆候が顕在化」というケースは決してまれではない。
であるから、このケースにおいては、GID概念が普及したとしても、子供を有してから性同一性障害の兆候が顕在化することは十分起こりうる。