性的少数者:企業が支援 多様な人材認め組織活性化へ 職場で肯定「安心して働ける」


http://www07.mai.vip.ogk.yahoo.co.jp/seibu/shakai/news/20120509ddg041040004000c.html
性的少数者:企業が支援 多様な人材認め組織活性化へ 職場で肯定「安心して働ける」
 ◇同性カップルに結婚祝い/相談窓口や勉強会も
 同性のカップルにも結婚祝い金を出すなど、同性愛者や性同一性障害者などのセクシュアルマイノリティー(性的少数者)を認知し、サポートする取り組みが一部の企業で始まっている。性別や国籍、宗教などにとらわれず、多様な人材が活躍できる環境作りを進めることで組織活性化と競争力アップを図る意識改革「ダイバーシティ」の一環と位置づけられている。専門家は「性的少数者に理解がある企業は少ない。当事者は自身の存在が職場で肯定されるので安心して働ける」と評価している。

 ダイバーシティは米国などの企業を中心に生まれた概念で、英語で「多様性」を意味する。国内では日経連(現・経団連)が00年に「ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」を作り、企業にも取り入れる動きがあったが、多くは女性の活用がメーン。性的少数者を巡る動きはほとんど見られなかった。

 そうした中、日本IBM(東京都中央区)が04年、性的少数者を巡る職場環境を考えるための委員会を設立。参加した性的少数者のメンバーと人事担当者が協議し、性的少数者が抱える悩みをメールで相談する窓口の設置や勉強会の開催につながった。会社側は昨年4月、結婚祝い金の対象を同性カップルにも拡大し、パートナーの親族が死亡した際に忌引を申請できる制度も検討中だ。

 委員会のリーダーを務める男性社員(50)は同性愛者であることを社内で秘していたが、委員会でカミングアウト(告白)し「自分自身を肯定できるようになった」という。同業他社から昨年転職したメンバーの男性社員(34)は「性的指向をオープンにできることは働く上で大きな心の支えだ」と話す。

 ゴールドマン・サックス証券(東京都港区)は08年、性的少数者に対する理解を深めるため、性的少数者が傷つきやすい言葉などを説明する会議を開催。10年からは性的少数者の学生を対象にした会社説明会も開き、会社としての取り組みを説明している。

 野村証券(東京都中央区)はホームページに会社の行動指針として「社員が性別、国籍、年齢、性的指向などのバックグラウンドの違いにかかわりなく、相互に価値観を尊重」と明記している。

 中京大の風間孝教授(社会学)は「性的少数者であることを職場で知られないようにエネルギーを使ってストレスを感じている人は多い。もっと多くの企業が性のあり方が多様であることを認識し、研修などの取り組みをするべきだ」と話している。【遠山和宏】

毎日新聞 2012年5月9日 西部夕刊