法務省による性犯罪者処遇プログラムの効果判定

法務省の報告では、性犯罪者処遇プログラムは効果があったと。
すなわちリスク要因の得点が、
刑務所では6.57が5.21に
保護観察所では6.8が3.2に
減ったと。 


結構な話だが、受刑者のほうがリスク要因が高いはずなのに変だなと思ったら、
刑務所のほうは6つのリスク要因の評価で最高12点、
保護観察所のほうは10のリスク要因の評価で最高20点、
と評価方法が違っていた。
さすが縦割り行政。


いずれにせよ、かなり濃密にやる刑務所より、さらっとしかしない保護観察所のほうが、点数の減少が大きいことは確か。


もともと軽症のものほど、プログラムの効果が上がりやすいということだろう。


http://www.moj.go.jp/content/000008581.pdf
平成20年度
法務省事後評価実施結果報告書
P62−P71
>(4)測定方法等
【達成目標1】
性犯罪者処遇プログラムの対象者が抱える問題性は,対象者が受講すべき処遇プログ
ラムの指導密度の判定のために実施している「ニーズ調査」の結果を活用して算出して
いる。
ニーズ調査では,1対1の面接を通して,6つのリスク要因※5について0点から2点
の3段階(合計12点)で評定しており,得点が高いほど,その対象者の性犯罪につなが
る問題性が大きいと判断される。
今回の評価においては,受講終了後に,このニーズ調査を再度実施して受講後のリス
ク要因の合計得点を算出し,受講前後の得点の変化を指標として使用することとした。
>4.評価結果等
【達成目標1】
(1)平成20年度に実施した政策(具体的内容)
再犯につながりやすい問題性の改善を図るため,性犯罪再犯防止指導の充実を図って
おり,性犯罪者処遇プログラムを実施した。性犯罪者処遇プログラムは,対象者の再犯
リスク要因を測定した上で,必要な指導密度のプログラムを実施するものである。平成
20年度は,443名の受講対象者に対して同処遇プログラムを開始した。
性犯罪者処遇プログラムは,最長8か月を要し,各年度をまたいで実施することが多
いため,評価については,同処遇プログラム開始者ではなく,平成20年度中に同処遇プ
ログラムの受講を終了し,受講後のニーズ調査の結果が得られた332名について検討し
た。
その結果,性犯罪者処遇プログラムの受講前のリスク要因の得点の平均は,6.57点,
同プログラムの受講後のリスク要因の得点の平均は,5.21点であり,受講者全体のリス
ク要因の得点が低下したことが明らかになった。
○指標受刑者の性犯罪者処遇プログラム受講前後の問題性の変化(平成20年度)
受講前受講後
リスク要因の得点(平均) 6.57点5.21点
プログラム終了者の受講前後の評点の状況
なお,参考指標とした「処遇プログラム受講者の再犯状況」については,表1のと
おり,平成21年3月末日現在,刑事施設で性犯罪者処遇プログラムを受講して出所した
者は,393名であり,そのうち,再犯を把握した者は32名であった。再犯者のうち,強
姦,強制わいせつ等性犯罪の罪名による再犯者は8名であり,現時点では,性犯罪によ
る再犯者数は比較的少数にとどまっている。
>※2「性犯罪者処遇プログラム」
平成17年度に外部有識者8名を構成員とした性犯罪者処遇プログラム研究会による検討
を踏まえて策定したプログラムである。
同処遇プログラムの対象者は,性犯罪の要因となる認知の偏り,自己統制力の不足等が
ある者としており,スクリーニング及び性犯罪者調査の結果に基づき選定される。また,
同処遇プログラムは,認知行動療法を基礎としており,問題行動の背景にある自らの認知
(物事の考え方,とらえ方)のゆがみに気付かせ,これを変化させることによって,問題
行動を変容,改善させることを目的としている。
※3「再犯リスク要因」
犯罪者の再犯を促進する要因。静的なリスク要因(static risk factor,処遇ないし介
入によって変えることのできない要因)としては,年齢,性別,犯罪歴等が,動的なリス
ク要因(dynamic risk factor,処遇ないし介入によって変えることのできる要因)とし
ては,物事のとらえ方や考え方(性暴力を容認する態度など)や犯罪につながりやすい傾
向(衝動性,対人関係の持ち方など)等が挙げられる。性犯罪者処遇プログラムでは,動
的リスク要因を変化させることをねらいとしており,これらのリスク要因が低下すること
が再犯防止につながると考えられる。
>○(表1)性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯状況(人)
平成21年3月末までの累計人数
受講者数 393人
再犯者数 32人
うち罪名が性犯罪の者 8人
※ 受講者数とは,性犯罪者処遇プログラムを受講した者のうち,追跡調査の開始以降(平成
19 年7月以降)に出所した者の数である。
※ 罪名が性犯罪の者とは,強姦,強制わいせつ等,犯罪名から性犯罪であることが明確である者をいう。
※ 再犯者数とは,刑事局から得られた再犯状況(平成21 年3月末までに事件処理されたもの)により把握した者の数である。
>※5「6つの再犯リスク要因」
6つの要因とは,?重要な社会的影響(否定的な影響を及ぼす者との交流の程度),?
親密さの欠損(他者と親密な関係を築ける力の程度),?性的自己統制(性欲等をコント
ロールする力の程度),?性暴力支持的な態度(性暴力を許容する態度の程度),?監督指
導への協力(指導に協力する姿勢の程度),?一般的自己統制(衝動的行動傾向等の程
度)となっている。

P75-76
>イ性犯罪保護観察対象者に対する性犯罪者処遇プログラムの実施(指標2関係)
性犯罪により刑を言い渡された仮釈放者及び保護観察付執行猶予者に対し,保護観
察官との個別又は集団面接方法により,認知行動療法の理論を基礎とした処遇プログ
ラムを実施した。具体的には,当該保護観察対象者に,性犯罪に結び付く要因を認識
させ,再犯防止に向けた動機付け等の指導を実施したものである。
平成20年6月1日以降に本プログラムの受講を開始し,平成20年12月までにその受
講を終えた全受講者249人について,性犯罪リスク要因に関する10の評価項目を点※6
数化(0点ないし2点)した。そして,プログラム受講前後の問題性(評点)の平均
値を算出することにより,受講前後の問題性(評点)の変化を検証した。
下記のとおり,受講後の問題性(評点)の平均は受講前と比べて3.6点低下してい
ることから,本施策による効果が認められるものと考えられる。
○指標2 プログラム受講前と受講後の評点の状況(目標値:プログラム受講者の問
題性(評点)の低下)
受講前受講後
評点(平均) 6.8点3.2点
(保護局調査による。速報値)
○参考指標1 性犯罪者処遇プログラム受講者数及び受講者中の再犯者数
平成20年末まで
の累計人員
受講者数1,180人
うち再犯者数16人
(保護局調査による。速報値)
(注1)「受講者数」は,平成19年9月から平成20年末までの期間中に性犯罪者処遇プログラムの受
講を開始した者の人員を示す。
(注2)「再犯者数」は,性犯罪者処遇プログラムを受講後,上記期間中に性犯罪(強姦,強制わい
せつ等)により起訴等された者(保護観察終了後に再犯をした者を含む。)の人員を示す。
>※6「10の評価項目」
10の評価項目とは,?性的活動への固執,?ストレス解消方法としての性的活動,?性
犯罪を許容する認知,?問題解決スキル,?対人関係スキル,?他人への共感性,?社会
的サポート,?再犯防止の計画,?保護観察に対する態度,?動機付けとなっている。