性犯罪治療関連

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070225/ftu_____kur_____000.shtml
2007.2.25東京新聞
犯行振り返る治療に効果
性犯罪者の再犯防止
 性犯罪者の再犯防止を考える国際シンポジウムが十八日、東京都内で開かれた。日本では、受刑者らに再犯防止の処遇プログラムが義務づけられたばかりだが、シンポには先駆的に取り組む海外から治療や処遇の専門家が参加し、有効策を話し合った。 (岩岡 千景)
 「なぜ罪を犯したのか、悩んでいる受刑者は、実は多いんです」
 英国アスク刑務所心理士のマーガレット・デイヴィーズさんはそう語り、同刑務所の処遇を紹介した。
 同刑務所では、一般的な理解能力がある知能指数(IQ)80以上の受刑者を、再犯リスク(危険度)から三段階に分類。段階に応じた再犯防止プログラムを提供して、「なぜ」犯罪をしたかを理解させる。犯罪に至るまでには、「意思決定の鎖」と呼ばれる個々の状況とそれに応じた考えや感情、行動がある。その一つ一つを振り返らせるのだ。
 例えば女性に暴行した男の場合、「妻とのけんか」がことの始まりだった。男は「妻は嘘(うそ)つきで欺瞞(ぎまん)的」と考え、家を出てパブへ。そこで「女はみんな、嘘つきで欺瞞的だ」と怒りを募らせ、ビールを次々注文。
 入ってきた女性を見るや「いい女。セックスしたがってるだろう」「あいつとして、妻に思い知らせてやる」と復讐(ふくしゅう)する感情を抱き、誘った。女性は「イヤよ」と断ったが、男が外に出た後、女性を見掛け「チャンス」と犯行に及んだ…。
 こうした過程をすべて書きだし、「なぜ起きたか」「犯罪に結びつく危険な考えや行動はどれか」を理解させる。そして「女は嘘つき」といった考えを、「一度は信じてみよう」などと置き換えて、新しい考えと行動を身に付けていく。
 この過程で危険因子と照らし合わせるが、怒りと性的関心が同時にわき起こると性犯罪に結びつきやすいという。
 続いて、被害者に対する共感を呼び覚ます。犯行は「短い情動」にすぎず、被害者には「長期にわたる危害」だと理解できない受刑者が多いが、被害者の役を演じさせることで、気づかせていく。
 さらに、新聞の切り抜きなどを使い「古い今までの自分」と「新しい将来の自分」を紙に描かせる。最後に再びリスク評価すると「着実に効果がみられる」という。
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 再犯リスクは「年をとると下がる」ともいわれる。だが、米国サンドリッジ安全処遇センター評価主任のデニス・ドーレンさんは、「加齢によるリスクの低減についてはデータが分かれており、不確かだ」と指摘。一方で、「受刑者に対する治療は効果がある」と語った。
 性犯罪の出所者を衛星利用測位システム(GPS)などを使って監視し、被害者に近づけないようにする方法については、「米国では疑問視する声が多い」と発言した。
 カナダのロックウッド心理サービスのウィリアム・マーシャル所長も「監視は警察には役立つが、高額な費用もかかる。費用対効果を考えた場合の再犯防止策としては疑問」と同調した。
 また、マーシャル所長は「関係者が人間的な温かさをもってかかわる」大切さを訴えた。
 日本側からは、東京医科歯科大難治疾患研究所の小畠秀吾助教授、大阪大学大学院人間科学部の藤岡淳子教授らが参加。
 日本では刑務所内などで処遇プログラムが昨年から導入されたが、今後は家族や地域と連携し、出所後も長期に治療でかかわれる態勢づくりが必要と提言した。


http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=2&ai_id=69362
「心理治療で性犯罪の再犯率下げる」
2007/02/26(Mon) 16:10

心理治療を通じて青少年性犯罪者の再犯率を大幅に下げる事ができるという論文が発表された。建陽大ソン・ウォンヨン教授は延世大に提出した博士学位論文で、認知行動治療を受けた青少年性犯罪者の再犯率は8.8%にとどまったが、治療を受けない性犯罪青少年の再犯率は3倍ほど多い24.1%に達したと明らかにした。性犯罪経歴のある青少年310人余りに対する調査を土台に作成された今回の論文で、ソン教授は治療を受けた青少年たちは治療前に比べ憂鬱と不安、さびしさなど不安な情緒が目立つように減ったと主張した。ソン教授の研究主題は、国家青少年委員会が延世大に委託した「青少年犯罪者認知リハビリ治療」プロジェクトの一環で選定され、研究結果は早ければ来月から全国保護観察所で活用される予定だ。


朝日新聞静岡
http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000000703060005
性犯罪再犯歯止め模索
2007年03月06日

◆刑務所内 専門家ら対話
 06年版「犯罪白書」に掲載された法務省法務総合研究所の調査によると、出所した672人の性犯罪の元受刑者を調査したところ、性犯罪再犯率は11・3%に上った。また、性犯罪の前科があって服役した場合、出所後に再び性犯罪を起こす確率が高くなることも指摘された。調査によると、性犯罪の前科があった127人の元受刑者のうち、28・3%に当たる36人が出所後再び性犯罪を起こしていた。被告人質問で弁護人からの「自分に何を補えば変われると思うか」という問いかけに、斎藤被告から明確な答えはなかった。(竹田麻衣)
◇感情コントロール指導
 法務省は06年5月から、性犯罪者を更生させ、再犯を防ごうと「性犯罪者処遇プログラム」を導入した。性犯罪による受刑者や、仮釈放中および保護観察が付いた執行猶予者の中から、再犯の可能性が高い者などを選び、面接やグループワークなどのプログラム受講を義務づける。
 昨年4月以降、静岡刑務所でプログラム受講が必要と判断された受刑者は12人。いずれもプログラム推進基幹施設の川越少年刑務所(埼玉県川越市)に送られた。
 プログラムは再犯の可能性の高さなどに応じて、高・中・低の3密度に分類され、受講者8人に対し指導者2人がつく1回100分のグループワークが中心。教育専門官や調査専門官などのプログラム専従職員のほか、業務契約を結んでいる民間の臨床心理士などが指導にあたる。
 同刑務所では、比較的問題性が高いとされる高、中密度プログラムを実施しており、現在5グループ、40人が受講している。グループワークは週2回で、高密度は約8カ月、中密度は約6カ月続く。
 プログラムでは、事件とは直接関係のない生活環境や人間関係などにさかのぼり、わき起こる性的欲求、事件に至った要因を特定させる。性的欲求を『抑えられないもの』ではなく、『コントロール可能なもの』と分からせ、犯罪を起こす前のどの時点でストップをかければいいのかを探る。考え方の偏りに気付かせ、コミュニケーションなどの対人スキルや感情を抑えるためのリラックス方法なども身につける。同刑務所によると、受講者からは「感情をコントロールして刑務所内でのトラブルを防げた」「『他人に話しても無駄』と思っていたが、実際に話してみて違うものの見方ができるようになった」との声もあがっているという。
 一方で、家族や周辺者の性犯罪者への理解にも課題がある。「家族、友人との人間関係が欠如し、よって立つ基盤がなかった」と斎藤被告の弁護人は最終弁論で述べた。性犯罪の根源的な要因に、環境や人間関係が影響していることも多く、周辺者の理解や協力は不可欠だという。同刑務所の福永瑞恵・首席矯正処遇官は「プログラムで一定の効果を上げても、(出所後)帰る場所や環境が変わらなければまた元に戻ってしまう可能性がある」と話している。