おととし、奈良で小学1年生の女の子がわいせつ目的で誘拐され、殺害されました。死刑を求刑された小林 薫被告には26日、判決が言い渡されますが、この事件がきっかけとなった性犯罪者の再犯防止策は、一体、どのように変わったのでしょうか。
奈良少年刑務所。今も収容施設として使われているレンガ造りの建物は、日本で最も古い施設です。
この奈良少年刑務所の一角に、刑務所に似つかわしくないグレーのカーペット敷きの部屋があります。円形に並べられた机。性犯罪を起こした受刑者たちが、自らの罪と向き合うための場所です。
おととし11月、奈良で小学1年生の有山 楓ちゃんが誘拐され、殺害されました。
逮捕されたのは、元新聞配達員の小林 薫被告(37)です。小林被告は、それ以前にも2度、幼い女の子へのわいせつ事件で逮捕されていました。
「性犯罪をする人は繰り返し繰り返し同じ快感を求める。繰り返していくうちに、より大きな刺激、より強い刺激。あるいは繰り返しの間隔が短くなっていく」(性犯罪に詳しい精神科医 針間克己さん)
繰り返される性犯罪。国は、この事件をきっかけに、ようやく動き始めました。法律を改正し、性犯罪を起こしたすべての受刑者に再犯防止プログラムを受けさせることにしたのです。
奈良少年刑務所では、10年ほど前から独自の方法で性犯罪者の更生に取り組んできました。この実績が評価され、国がつくった再犯防止プログラムのモデル施設に指名されました。
プログラムは認知行動療法と呼ばれるもので、8人の受刑者で1つのグループをつくります。
性犯罪者は「女性も喜んでいる」「女性が悪い」など誤った認識を持っているケースが多く、グループの中で順番に、自分の罪や性についての考え方をみんなの前で話したり、自分史を書くなどして、どこで認識にゆがみが生じたのかを探ります。そして、そのゆがみを正していくのです。
「ある意味、葛藤も出てくるでしょうし、辛い作業という面もあるでしょう。ただ、そうすることによって結果的に自分自身を深く知り、性犯罪を犯した人自身のためにもなる」(性犯罪に詳しい精神科医 針間克己さん)
既に8人の受刑者がプログラムの受講を終えました。彼らに罪を自覚させることができたのか。テキストがあるとはいえ、現場は試行錯誤の連続だったといいます。
「性欲は本能的に持っているものですから、これをいかに本人が自分の意識で抑えるか、ひとりひとりで違ってくるので、そこが一番難しい」(奈良少年刑務所 伊藤勝信さん)
ようやくスタートした性犯罪者の矯正教育。死刑を求刑された小林被告にも更生の余地は認められるのか。判決は26日に言い渡されます。(25日18:11)