性犯罪後の講習が効果、再犯率5分の1に…白書

http://www.yomiuri.co.jp/national/20151113-OYT1T50125.html
読売
性犯罪後の講習が効果、再犯率5分の1に…白書

2015年11月13日 15時23分



 法務省は13日、今年の「犯罪白書」を公表した。


 2014年に窃盗や傷害などの一般刑法犯で検挙された中で再犯者は過去最悪の47・1%(前年比0・4ポイント増)に上り、18年連続で上昇した。性犯罪の再犯状況に関する特別調査では、再犯防止プログラムの受講と再犯率の関係を初めて調べ、受講者の再犯率は、受講していない満期出所者の5分の1の5・6%にとどまった。同省は、今年度から本格実施している短い刑期の性犯罪者のためのプログラムを今後拡大していく考えだ。

 特別調査では、08年7月〜09年6月、性犯罪で懲役の有罪判決が確定した1791人の再犯状況を調べた。

 このうち実刑となった731人の出所後3年間の性犯罪再犯率を分析したところ、刑務所と、仮釈放後の保護観察の両方で再犯防止プログラムを受講した120人では5・6%だった。これに対し、受講経験のない満期出所者は25・5%。仮釈放されたが受講経験のない人は16・8%で、受講者とは大きな差が出た。




http://digital.asahi.com/articles/ASHCF52FWHCFUTIL020.html?rm=436
朝日


痴漢・盗撮、4割が再犯 有罪確定後5年以内に

金子元希
2015年11月14日06時56分


 痴漢や盗撮をした人の4割が、有罪確定から5年以内に犯罪を繰り返していることが13日に法務省が公表した「犯罪白書」で明らかになった。強制わいせつの検挙件数も、昨年は過去最多。白書は、性犯罪の加害者の特徴に合わせた対策の必要性を指摘した。

 今回の白書は、厳罰化の検討が進む性犯罪を重点的に調べた。昨年の強姦(ごうかん)での検挙件数は1100件、人数は919人で、ともに前年より微減。強制わいせつの検挙件数は4300件、人数は2602人でともに過去最多だった。

 さらに、2009年6月までの1年間に性犯罪で懲役刑の有罪判決が確定した1791人を対象に調べたところ、強姦をした人の42・1%に前科(性犯罪以外を含む)があった。強制わいせつは36・8%だった。

 また、判決が確定してから5年以内に再犯(同)した人の割合は、痴漢が最も高く44・7%。次いで盗撮の36・4%だった。強制わいせつは16・0%、強姦は3・6%だった。ただし、重い刑で服役中の人などは含まれていない。

 学歴別に見ると、盗撮や痴漢では、大学に進学した人の割合がそれぞれ38・2%、33・2%で高かった。性犯罪を繰り返した人が初めて犯行に及んだ年齢は、7割が29歳以下だった。

 性犯罪の厳罰化をめぐっては、法制審議会(法相の諮問機関)の部会が法定刑の引き上げや告訴を不要にすることなどを議論している。白書は「加害者が抱える問題は様々であり、個別の対応が再犯防止には有効だ」と提言した。

 一方、白書によると過失による交通事故を除く刑法犯(一般刑法犯)で、昨年1年間に検挙された人は戦後最少の25万1605人。うち65歳以上の高齢者が占める割合は18・8%で、過去最高を更新した。一般刑法犯の全体に占める再犯者の割合は47・1%で、これも過去最高となった。(金子元希)

■更生プログラムに効果も

 性犯罪の再犯をどう防ぐのか。各地の刑務所や保護観察所では2006年から「性犯罪者処遇プログラム」を進めている。

 ゆがんだ認識や対人関係を改めさせることが目的。刑務所では、主に教官ら2人と受刑者8人によるグループワークを3〜8カ月続ける。仮釈放された人などには保護観察所が2週間ごとに計5回の面接を行う。

 埼玉県の川越少年刑務所では、年間約80人に対してプログラムを実施。ある強姦事件の加害者は、厳しい親への反動が犯行の背景にあったことを、人生を振り返る中で気づき、考え方を変えたという。担当の教官は「加害者の中には、幼いころに性被害を受けた人もいる。要因は多面的で、本人自身がわかっていないケースが多い」と語る。

 白書では、09年6月までの1年間に有罪判決が確定した後、5年以内に刑務所を出た431人を追跡調査。受刑中と出所後ともにプログラムを受けた人の再犯率(性犯罪以外も含む)は9・9%で、受けなかった人は36・6%だった。

 性暴力被害に詳しい戒能(かいのう)民江・お茶の水女子大名誉教授は「対策は被害者のケア、厳罰化、更生という3点が不可欠。プログラムの内容を検証して、対策を充実してほしい」。加害者の治療に取り組む精神科医福井裕輝さんは「医療的な対応が必要な人もいるが、今の体制では欠けている」と指摘する。(金子元希)


http://mainichi.jp/select/news/20151113k0000e040253000c.html
毎日

犯罪白書:再犯防止プログラムに効果

毎日新聞 2015年11月13日 12時45分(最終更新 11月13日 14時24分)


 13日に公表された2015年版犯罪白書には、再犯リスクの高い性犯罪者を対象に刑務所と保護観察所で実施されている再犯防止プログラムについて、双方を受講した人としなかった人の再犯状況を比較する初の分析結果も盛り込まれた。刑期が比較的長い人は分析対象から除外されているものの、再犯率に有意の差が見られ、一定の効果がうかがえる結果となった。


 分析したのは特別調査の対象となった1791人のうち、実刑が確定して刑務所で服役するなどした431人。双方を受講した120人▽どちらも受講せず満期で釈放された247人▽どちらも受講せず仮釈放になった64人−−に分け、出所日から3年間の再犯状況を調べた。

 再犯を性犯罪に限ると、双方受講者では6人にとどまったが、受講しなかった人は満期釈放者で53人、仮釈放者でも10人と再犯率が高くなった。全犯罪に広げた場合でも、双方受講者10人に対し、受講しなかった人は満期釈放者で82人、仮釈放者で12人となった。

 両プログラムは、奈良小1女児誘拐殺人事件(04年)をきっかけに法務省が06年度から導入している。

 性犯罪を巡っては岩城光英法相が10月、強姦罪の法定刑引き上げなどを柱とした刑法改正要綱を法制審議会に諮問。また、法務省は政府として性犯罪者の再犯防止プログラムの充実を検討する方針も明らかにしている。【和田武士】

 ◇スタッフ育成も重要

 千葉大社会精神保健教育研究センターの東本愛香特任助教(司法心理学)の話 双方受講者の再犯が少ないのはプログラムの一定の効果だろう。更に効果を上げるためには、対象者が抱える問題により適したプログラムを提供するだけでなく、指導する側のスキルの向上も不可欠だ。現在は刑務所や保護観察所の職員らが対応しているが、今後は司法精神医学や精神保健の知識を十分に備え、プログラムの実践経験が豊かなスタッフの育成も重要な課題になるだろう。