成人と思春期の性同一性障害者へのホルモン療法6

ホルモン療法の副作用
ホルモン療法投与には副作用が起こりうる。ホルモン依存性の腫瘍に特に懸念が持たれている。1997年に、我々は816名のMTFと293名のFTMについて調査した。それ以来、患者数は倍増し、死亡率と有病率の最新の評価が可能だ。死亡率は対照群と比較して高値ではない。しかしホルモン投与は、以下述べる副作用と関連がある。

静脈血栓症
この副作用発生率は、経口エチニルエストラジオール服用をしている、MTFの2から6%だ。インビトロの研究では、この血栓症性の効果は、経口エチニルエストラジオールに典型であり、経口17βエストラジオールや経皮エストロゲンではない。体を動かさないことは、血栓症のリスク要因であるため、外科手術を受ける3、4週間前には、エストロゲン投与は中止すべきだ。手術後、患者が十分に体を動かせるようになれば、エストロゲン投与は再開可能だ。

動脈硬化
男女間における心血管系疾患の発現率のかなりの性差は、ホルモン療法による影響を予期させるものではあるが、実際のリスクについては不明だ。MTFにおけるエストロゲン投与と、FTMにおけるアンドロゲン投与の、生化学的リスクマーカーへの影響は研究されている。それによれば、アンドロゲンよりエストロゲンの方が、影響は否定的だ。しかし、ホルモン療法の心血管系へのリスクへの影響の十分な評価には、長期的な臨床研究が必要だ。低ゴナドロピン血漿患者に用いられる、ホルモン補充療法と比較し、性同一性障害者では、使用量がかなり多いことは、銘記すべき事だ。