成人と思春期の性同一性障害者へのホルモン療法8

良性の前立腺過形成
前立腺性別適合手術によっては除去されない。前立腺切除は、やっかいな外科手術で、尿失禁などの合併症をきたしうる。予期されるとおり、前立腺の大きさは、アンドロゲン抑制の後は、縮小する。エストロゲン投与は、前立腺過形成や前立腺がんの徴候を引き起こさない。良性の前立腺過形成で、経尿道前立腺切除を必要とした、一症例の報告がある。疫学的研究によれば、40歳前の精巣摘出は、前立腺がん及び良性の前立腺過形成の発達の予防となる。この一症例の報告は、女性ホルモン投与開始は40才過ぎてからである。25年の女性ホルモン投与後に、精丘が肥大し障壁となり、精丘切除が必要となった報告も一例ある。


前立腺がん
女性ホルモン投与中で、前立腺がんになったMTFの症例は3報告ある。これらのがんが、エストロゲン感受性があったのか、エストロゲン投与前から存在し、その後にアンドロゲン非依存性に脱分化したのかは明確ではない。これらの患者は女性ホルモン開始は50才を過ぎてからだった。既述したように、疫学的研究によれば、40歳前の精巣摘出は、前立腺がん及び良性の前立腺過形成の発達の予防となり、この3報告は矛盾とはならない。ほとんどのクリニックでは、前立腺特異抗原のスクリーニングはルーティンには行わない。


卵巣がん
我々は最近、テストステロン投与を長期行っているFTMにおける卵巣がんを2例経験した。アンドロゲン投与されるFTMの卵巣は、多嚢胞性卵巣と類似していて、より悪性化しやすい。それゆえ、性別移行後のFTMの卵巣を除去することは、合理的に思われる。いくつかの国では、治療は保険適用されておらず、それゆえ卵巣切除が遅れる可能性があり、悪性化のリスクを高める。