成人と思春期の性同一性障害者へのホルモン療法7

膵炎
高トリグリセリド血症のある37歳のMTFが、SRS前のエストロゲン療法に関連して、生命に危険のある重症の膵炎を発症した。このまれなエストロゲン投与の合併症は、今日まで、女性にしか見られていない。


プロラクチン分泌細胞腺腫
ホルモン療法開始前は、正常なプロラクチン血中濃度だったが、多量のエストロゲン投与の後、プロラクチン分泌細胞腺腫を発症した報告が4例ある。我々は最近、14年の正常量エストロゲン投与の後に、脳下垂体の微小プロラクチン分泌細胞腺腫を発症した1例を経験した。原因論については確定してないが、エストロゲン投与をしているMTFについては、長期的なプロラクチン血中濃度の測定を、我々は推奨している。


乳がん
エストロゲン投与中に乳がんを発症したMTFの報告が2つある。我々の約1800名のMTFでは、今のところ、そういった例はない。しかしこれだけの数と、エストロゲン投与の期間の多様さ(1年から25年)からは、リスクを評価する確固たる結論は出せない。加齢はがんの要因であり、長期的なエストロゲン被爆も要因の可能性がある。それゆえ何才でエストロゲン投与をやめるべきかを議論するのは適切なことだ。どの患者においても、定期的な医学的検査に加えて、胸の自己検診もエストロゲン投与の副作用チェックには欠かせない。女性へのガイドラインと同じである。
驚くべき事に、両胸の乳房切除術後のFTM乳がんの発症例が1例ある。これは、乳房の
残遺組織に、テストステロン治療の10年後に起きた。テストステロンは一部分が芳香化され、エストラジオールとなる。