性同一性障害特例法:施行5年 適合手術、国内は2割 体制拡充が課題

http://mainichi.jp/select/science/news/20090801ddm012040064000c.html
性同一性障害特例法:施行5年 適合手術、国内は2割 体制拡充が課題
 ◇保険適用外、施設少なく
 04年7月の「性同一性障害特例法」施行後、戸籍上の性別を変更した約1200人のうち、性別変更の要件である性別適合手術を国内で受けた人が2割以下とみられることが、日本精神神経学会の調査で分かった。保険適用外で手術が高額になることや、実施施設が少ないためとみられ、大半が海外で手術を受けていた。国内の医療体制の拡充を求める声が高まりそうだ。【丹野恒一】

 心の性と体の性が一致せず悩む性同一性障害の人は、全国に1万人以上いるとされる。司法統計によると、性別変更が認められた人は年々増え、08年は前年比1・57倍の422人。累計では1263人になった。

 同学会が国内での性別適合手術(性器の切除、形成など)の状況を調べたところ、97〜07年で220人にとどまり、全員が性別変更したとしても、国内で手術した人は2割弱だった。調査を担当し、自らも年間約1000人の診察や性別変更の相談に応じている「はりまメンタルクリニック」(東京都)の針間克己院長は「08年以降も含め、国内で手術をした人は1〜2割しかいない」と話す。国内の手術の大半を手掛ける岡山大学病院の松本洋輔助教(精神科神経科)も「4年以上待ってもらわなければならない状況で、海外での手術を選ぶ人も多い」という。

 術後にトラブルも多く、「性同一性障害を抱える人々が、普通にくらせる社会をめざす会」の山本蘭代表は「海外で手術を受け帰国後意識不明となった事例もあった。手術を保険適用とすれば、国内で実施する医療機関も増える」と訴える。調査は3日に東京都千代田区で開かれる「性同一性障害シンポジウム2009」で報告される。

毎日新聞 2009年8月1日 東京朝刊