「性嗜好異常を伴う高機能広汎性発達障害―性犯罪と行動化抑止について―」
上野千穂、織田裕行ほか
精神神経学雑誌 第109巻第7号(2007)637-653
拝読。
大変興味深い。
勉強になった。
症例A
女児に性的関心、刺したい。
30代女性を刺し精神鑑定。
診断が、広汎性発達障害と小児性愛はよいとして、「刺してその血を飲みたい」を性的サディズムで片付けているのは、疑問。
血を飲みたいのは「ヘマトフィリア」(嗜血症、haematophilia)。
ヘマトフィリアはリストカット後に自分の血を吸う場合などもあるが、このケースでは「女の子になりたい」という願望があり、その願望がかなわないために、女の子の血を飲みたいという動機。尿を飲みたいという空想もあり。症例Bとの比較の意味も含めて、変身願望の問題も考察してほしかった。
症例B
「自分は女の子では」と言う感覚があり、GIDではと、受診。
小児への性的関心もあることが判明。犯罪にはいたらず。
P643
>二次成長前
性徴。
発達障害があり、性犯罪を犯したものへの矯正教育について論じているが、一般的な矯正教育との比較ではなく、できれば、現在の性犯罪者治療プログラムとの比較で論じてほしかった。
あと、この論文で感じたのだが、広汎性発達障害における性同一性障害の問題は、対人関係の問題から来るidentity確立の困難性だけでなく、フェティッシュ/強迫的とらわれとしての変身ファンタジーの側面も見落としてはいけないと思った。
いずれにせよ機会があれば関西医大の先生と議論したいところ。