『戦後日本女装・同性愛研究』:女装者との差異を語る−「TS/TGであること」をする実践−

『戦後日本女装・同性愛研究』を読み始める。
著者は、編者の矢島正見をはじめ、杉浦郁子、三橋順子石田仁村上隆則、鶴田幸恵、谷口洋幸という、豪華メンバー。
7200円という高価な値段ではあるが、図書館に買わせてでも、読みたい1冊。

戦後日本女装・同性愛研究 (中央大学社会科学研究所研究叢書)

戦後日本女装・同性愛研究 (中央大学社会科学研究所研究叢書)

しかし、なにぶん600ページを超える分厚さで、中身も濃すぎる。
ということで少しずつ読んで、少しずつ紹介。
今日は、GID研究会でも時々お見かけする鶴田幸恵さんの、


女装者との差異を語る−「TS/TGであること」をする実践−


という御論文。
タイトル通り、「自分はTS/TGであって、女装者ではない」と主張するために、何をするか、ということを語りの聞き取りから分析したもの。
まあ、昨今の、女装から性同一性障害への流れ、というものは感じていたが、ここまで明確に言語化してるのはすごいと思った。


章立てとしては、


>はじめに
>第1節 TS/TGカテゴリーの登場
>第2節 女装者というカテゴリーの把握―スティグマとしての「女装者」―
>第3節 女装者との差異化
>1.“身体違和”を語る
>2.日常性・恒常性への志向を語る
>3.「女に見える女装」を達成し、“切り替え”ができなくなると語る
>第4節 差異化によって受肉化される新しいカテゴリー
>おわりに


という流れ。


以下要約的部分の引用。
P557
>自らを女装者でなくTS/TGだとしていく過程は、自らをノーマルにしていく過程である。彼女らは、医学から性別を変える「正当性」を与えられたことによって、自らをノーマライズできるようになる(→第1節)。それを実現するために、彼女らは一方で、女装者をスティグマの付与されたカテゴリーとして特定し、自らとそれを切り離そうとする(→第2節)。他方で、その切り離しを、女装者との差異を語るという実践によって、さらに自らの外見を女にしか見えないものに変えていこうという実践によって、成し遂げていく(→第3節)。そのようにして「TS/TGであること」を「すること」でTS/TGであり続けていく彼女らの実践が、TS/TGというカテゴリーを「実際に目に見えるもの」にしていくのである(→第4節)。