大航海2006年 No.57 特集 女と男への新視点

「大航海2006年 No.57 特集 女と男への新視点」を読む。

http://www.shinshokan.co.jp/daikoukai/dai-index.html


玉石混交ながら、全体としてはまあまあ面白い論文が並ぶ。
以下、メモ、コメント。


・性差はどこまで遺伝子で決まるのか 中込弥男
p66
ネズミで浮気を抑える遺伝子。一夫一妻のネズミである、プレリーハタネズミのオスでは、脳のある場所でバゾプレッシン1のV1受容体の活動が、乱婚型のアメリカハタネズミより高い。
この遺伝子をアメリカハタネズミのオスに注入すると、一夫一妻型に変身。


AJ調査ではネタはこの論文。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15201909&query_hl=1&itool=pubmed_DocSum


・ヒトの性差 脳における性差を中心に 新井康允
いつもの総説。


・ヒトの性はいかに決定されるか 池田清彦
P80
>中には体と心の性が多数派と食い違い人がでてくる。これは別に病気ではない。いくつもある性パターンの組み合わせの一つにすぎない。これを「性同一性障害」などと呼ぶのは差別ではないかと私は思う。たとえば「性同一性障害特例法」によれば、生殖能力を失っていることを条件に戸籍上の性別変更を認めるとのことだが、中には身体は物理的に変更したくないが、体のみてくれとは異なる性として生きたい人もいるであろうから、こういう法律は問題ではないか、それを当然と思うのは、我々の文化が男女の二分法から自由ではないせいである。


・ゲノム研究最先端と性差問題 青野由利
無難な内容。


・対話 生物の性差、ヒトの性差 田中冨久子×長谷川眞理子
ジェンダー・フリー保守主義も間違っている! 真に女性が活躍できる社会を構想する。

P100
長谷川>ジェンダー法学をやっている人たちに私が頭にくるのはジェンダー法学者って「性差は存在しない」というほうにもっていきたがるんです。で、ファウストスターリングもそうだけど性差はすべて社会が作っているんだ、脳の性差だって全部社会が作ったんだって言うんです。そうじゃなくてジェンダー法学だったら何の差があろうと人はどうやったら平等に扱われるか、というシステムを考案すればいいじゃない。


フェミニズムヒューマニズムである 堀 茂樹
P120
ヒューマニズムあるいは「自由の哲学」の系譜を代表する近代人たちにとって、人間は性的属性(男性・女性)、民族的特性などをはじめとする諸々の特殊性のうちのいあなるものにも還元され得ない実存であった。彼らのヒューマニズムは、人間の「人間性」を何らかの特定の―したがって排他的な―本質によって定義しようなどとすることがないばかりか、むしろ人間に固有でありかつ普遍的なものがあるとすれば、それはあらゆる種類の定義から身を引き離す能力(=自由、超越性)であり、いわば固有の性質を持たないことだけが人間の固有なのだとまで言い切る思想なのである。


生物学的決定論が台頭する時代、ジェンダー論頼みのフェミニズムが「城を包囲されて外堀まで埋められてしまっているのに大奥で延々神学論争を繰り返す」ようにならないには、ヒューマニズムにもどれ、と主張。


・性差をどう考えるか 本質主義構築主義論争の不毛をこえて 赤川 学


ジュディスバトラーの「セックスもジェンダー」という一元論でなく、『人間の本性を考える』のピンカーのいう、「差異はある。だからこそ、同じ扱いをすべき」という、平等論を目指せ、と。


・ブレンダの悲劇が教えるもの 千田有紀

P141
>性別によって社会を編成するジェンダー秩序を無理やりに押しつけられた点にこそ、悲劇が存在しているのではないか。


・男が罪を犯したのではない、男であることが罪なのだ 荷宮和子


論評に値せず。活字にするレベルではない。


・なぜ結婚できないのか  すれ違う男女の気持ち  楡木満生


友達と遊ばず、ゲームばっかりしているから、人付き合いも出来ないし、結婚も出来ない、という主張?
バーナム効果的コメントっぽい。