強迫と脅迫

「強迫」とは精神医学を少しでもかじったことがあれば、誰でも知っている言葉だ。
簡単に言うと
「ばかげていると分かっているけどやめられない」
こと。
たとえば
「ばかげたことが頭から離れない」
「不潔と思い手洗いがとまらない」
「何度も鍵の確認をしてしまう」
というようなやつ。
この「強迫」を「脅迫」と間違えて書くと大変恥ずかしい。
強迫神経症」を「脅迫神経症」とか書いていると、トホホである。

このように、「強迫」とは精神医学的には「脅迫」と何の関係もない概念である。

ところが、法律の世界ではちょっと違うようだ。

「詐欺や強迫による婚姻は取り消せる」
という文章を見かけ、
「強迫でなく、脅迫の間違いだろう」
と突っ込みを入れかけただのが。

民法第747条には、「詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」
と書いてあった。

調べてみたら、民法では「強迫」、刑法では「脅迫」と使い分けるらしい。
脅迫と強迫の違いは検索するといろいろ出てくるが。
ここによると

>強迫とは他人に害悪を加えることを示して恐怖心を生じさせることを指し、民事上の違法行為として、損害賠償を請求できる。脅迫とは人を恐怖に陥れる目的で害を加えることを告知することを指し、刑事上の責任が科される(脅迫罪)。

らしい。
読んだところで意味は良く分からないのだが。
まあ、強迫のほうが、脅迫よりハードルが低くゆるい概念なのであろう。

いずれにせよ、法律家は、われわれ精神科医には想像の及ばないわけの分からない言葉の使い方をする。
まったく。