一人で妄想的に考察しても仕方ないので、データを見ることにした。
「トランスジェンダーの心理学」にデータがある。
P122,表22によれば、
トランス女性の、性指向別、ジェンダー・アイデンティティ得点値は、
女性指向 57.80
両性指向 65.84
男性指向 76.92
で、やはり男性指向のもののほうは得点が高い。
いっぽう、トランス男性では
女性指向 77.46.
両性指向 78.17
男性指向 81.80
と関係はない。
男性指向のものは数が256名中5名なので、統計的にはそもそも無理があるが。
著者は考察しているが、あまりうまく説明できていない。
ただ、ほかのページも見ていて、ある事に気が付いた。
このトランス男性群は、別の時の研究より、点数がそもそも高い。
p96やp100の研究より高いのだ。
P100には、治療別の点数が載っている。
ここでは未治療群より、治療群のほうが点が高い。
p122のトランス男性の点数は、治療群並みである。
どうしてこういう点の違いが出ているかは考察されていないが。
おそらく対象の差だ。
p100の対象は、精神科での調査
p122は、精神科と産婦人科で調査。
p122はおそらく産婦人科が多いのであろう。
精神科には、性別違和を訴えても、その違和の強弱はさまざまである。そのため点数の低いものもいる。
一方婦人科に行くものは、ホルモン注射をしにいくか、ホルモン注射に備えて、身体検査に行くものである。いわば中核群である。
よって調査の医療機関の違いが点数の差に反映される。
だからp122の調査では、多様な対象とはなりえず、男性への性指向のトランス男性も強固なアイデンティティを持つのだろう。
ジェンダー・アイデンティが強固でなく、治療も行わない群のなかの、性指向のデータがほしいところだ。
トランスジェンダーの心理学――多様な性同一性の発達メカニズムと形成
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