「性同一性障害、社内に知られた」 社員が職場提訴へ

http://www.asahi.com/articles/ASJ6L7S3HJ6LOIPE028.html?iref=comtop_8_08
朝日
性同一性障害、社内に知られた」 社員が職場提訴へ

二階堂友紀、斉藤佑介

2016年6月20日07時15分

 女性的な名前に改名したことを会社に報告後、意思に反して名簿などを書き換えられ、心と体の性が一致しない性同一性障害であることが社内に知られたなどとして、愛知県内のヤクルト子会社社員が職場の工場を相手取り、人格権の侵害に対する慰謝料など330万円の損害賠償を求め、近く名古屋地裁に提訴する。

 工場は同県日進市の「愛知ヤクルト工場」。朝日新聞の取材に「本人と逐次協議しながら進めており、適切な対応だった」と答え、争う方針を示した。

 訴状などによると、社員は戸籍上は男性だが、性別の自己認識は女性の40代。私生活は女性として過ごし、職場では偏見などの不利益を恐れ男性として働いていた。女性ホルモンの投与などで容姿が変化し始めた2014年5月、同僚に「性同一性障害ではないか」と言われ、上司に同障害の診断書を出した。

 一方、社内での公表や女性としての処遇は望まず、男性と一緒に着替える苦痛が増していたため更衣室だけは別室を希望。同月下旬に家裁が改名を認めた際も、社内で同障害を知られたくないとして、他人の目に触れる名簿などの記載は従来の男性名を要望していた。

 工場側は役員用更衣室や来客用トイレの使用などを認める条件として全従業員への説明を求め、6月初めには名簿などの名前をすべて女性名に変更。周囲の知るところとなった。その結果、社員は1日3回にわけて全従業員に朝礼で「私は性同一性障害です。治療のためご迷惑がかかります」と説明することを余儀なくされ、精神的苦痛からうつ病などを発症。昨年3月に約2週間休職し、復職後は不当な配置転換をされたなどと訴えている。

 工場側は取材に、全従業員への説明については「本人の同意があった」と回答。「特別な配慮をする以上、他の従業員に疑義が生じたり興味本位のうわさが先行したりするより、同意のもとで情報を開示し理解を得ることが、長期的には本人のためになると判断した」などと説明している。(二階堂友紀、斉藤佑介)

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016062002000064.html
中日新聞

性同一性障害の公表を強要」 愛知ヤクルトを社員提訴へ



 「愛知ヤクルト工場」(愛知県日進市)に勤務する県内の四十代の会社員が、性同一性障害の全従業員へのカミングアウト(公表)を強要されるなど、不当な対応で精神的苦痛を受けたとして、工場に三百三十万円の損害賠償を求めて近く名古屋地裁に提訴することが分かった。代理人弁護士によると、性的少数者(LGBT)の職場でのカミングアウトを巡る訴訟は全国でも例がないという。


 会社員は戸籍上は男性だが、心の性は女性。二〇一四年一月に性同一性障害の診断を受けた。現在は性別適合手術に向け、ホルモン治療などを進めている。


 会社員らによると、診断後、女性名に戸籍を変更し、五月になって保険証や年金手帳の書き換え手続きのため、上司に改名を報告。男性用以外の着替え場所を求めた。他の従業員への発覚を恐れ、職場では男性名の使用継続を希望したが、工場側は報告した翌月から工場内の掲示物の名前などを女性名に書き換えた。


 さらに、役員用更衣室と男女双方が利用する来客用トイレの使用を認める代わりに、全従業員への公表を要求。六月中旬、会社員は朝礼で三回に分けて計百四十人の全従業員に性同一性障害であることを公表させられ、不眠や抑うつ状態になったという。昨年一月にはうつ病と診断され、三月に半月ほど休職。復職すると、窓や空調設備のない部屋で一人で作業するよう命じられたといい、会社員は「『追い出し部屋』で事実上の退職勧奨」と訴えている。


 LGBTの職場環境を巡る訴訟では、昨年十一月に戸籍上は男性だが女性として勤務している経済産業省の職員が、女性トイレの使用など処遇改善を求めて国を訴えたケースがある。

◆強制でなく本人同意


 <愛知ヤクルト工場の話>職場での氏名の変更は本人の申し出によるもので、通称名を許可しないと拒否した事実はない。職場での公表は特別な配慮をする以上、情報を開示して他の従業員の理解を得るのが職場全体の協力体制につながるという判断から打診した。ただし強制ではなく、本人は同意し、自らの意思と言葉で公表した。昨年三月の復帰以降の職場環境も劣悪ではない。人格権を侵害したり、安全配慮義務を欠いたりした事実はないと考えている。


 <工場の親会社・ヤクルト本社の話>工場の対応は適切だと考えている。


 <LGBT>女性同性愛者のレズビアン、男性同性愛者のゲイ、両性愛バイセクシュアル、性同一性障害など生まれつきの性別に違和感を持つトランスジェンダーの頭文字を取った性的少数者の総称。


http://www.yomiuri.co.jp/national/20160620-OYT1T50070.html
読売
性同一性障害「公表強いられた」…勤務先提訴へ

2016年06月20日 13時41分


 性同一性障害を職場で公表するよう強いられたとして、愛知県日進市の「愛知ヤクルト工場」で働く同県内の40歳代の会社員が、同工場に330万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴することがわかった。


 工場側は「本人も公表に同意しており、強要はしていない」として、争う方針を示している。

 代理人弁護士によると、会社員は戸籍上は男性で、心の性は女性。私生活でも女性として生活し、2014年1月、性同一性障害の診断を受けた。

 同年5月には戸籍名を女性名に変更し、保険証などの変更手続きのため上司に報告した。会社員は工場内での公表を望んでおらず、更衣室を確保することを求めた。

 一方、工場側は名札などを女性名に変更。更衣室を確保するかわりに、全従業員に対して性同一性障害を公表するよう求めた。会社員は、朝礼で説明させられた精神的苦痛から、うつ病になったとしている。

 工場側は「従業員への公表は、うわさが先行しないよう本人と話し合った結果。更衣室などについてもきちんと配慮しており、本人ととらえ方が異なっている」と反論している。

 愛知ヤクルト工場はヤクルト本社(東京都港区)の100%子会社。ヤクルト本社広報室は「愛知ヤクルト工場の対応は適切だと考えている」としている。