性別適合手術の40代経営者「女性更衣室など利用できず人格権侵害」 スポーツクラブを提訴

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151225-00000531-san-soci
性別適合手術の40代経営者「女性更衣室など利用できず人格権侵害」 スポーツクラブを提訴

産経新聞 12月25日(金)12時21分配信

 心と体が一致しない性同一性障害GID)のため、男性から女性への性別適合手術をした京都市内の40代の経営者が、スポーツクラブから戸籍上の男性として施設を使うよう求められ、人格権を侵害されたなどとして、運営する「コナミスポーツクラブ」(東京都)に約472万円の損害賠償を求める訴訟を25日、京都地裁に起こした。

 訴状によると、経営者は平成21年、京都府内のスポーツクラブに入会。24年に性同一性障害と診断され、26年に性別適合手術を受けた。経営者は手術前には、他の利用者とのトラブルを避けるため、化粧を落とし男性用更衣室などを利用。手術を機に、女性用更衣室の使用を求めた。

 クラブ側は、一度は認めたものの「本社がだめと言っている」と「戸籍上の性別に準じた施設利用」に同意する書面への署名・押印を促した。経営者は10代の娘がいて、成人するまで戸籍の性を改められないことも説明したが、認められなかったという。

 原告は「女性であることを否定し、クラブの利用を不可能にしたのは人格権の侵害だ」と主張している。

 コナミスポーツクラブは「こうした申し出は特別なケースではなく、戸籍に応じて施設を利用している人もいる」と説明し「内容が確認でき次第、適切に対処していく」としている


http://mainichi.jp/articles/20151225/k00/00e/040/212000c

性同一性障害 提訴の元男性「男性という十字架から…」

毎日新聞2015年12月25日 11時51分(最終更新 12月25日 12時31分)

女性更衣室使用拒否でスポーツクラブに賠償提訴 京都地裁

 性同一性障害で女性に性転換した京都市の40代の企業経営者が、京都府内で通うフィットネスクラブで女性更衣室などの使用を拒否され、プライバシー権や人格権を侵害され精神的苦痛を負ったなどとして、クラブを運営するコナミスポーツクラブ(東京都品川区)に慰謝料など約470万円の損害賠償を求める訴えを25日、京都地裁に起こした。提訴後、経営者は白のセーターとハイヒール、指先にネイルを施した姿で記者会見した。「戸籍に縛られて暮らさなければいけないのか。すべての男性が男性という十字架から逃れられないのか。裁判で問いたい」と提訴理由を語り、「私のような人がいることを広く知ってほしい」と訴えた。


 心と体の性が一致しない「性同一性障害GID)」を巡っては2003年、性同一性障害特例法が成立。性別変更の要件として、複数の医師の診断を受けた▽性別適合手術を受けた▽子どもがいない−−ことなどが定められた。08年に要件が緩和され、子どもがいても成人すれば変更可能となった。

 今月13日には、GIDと診断され、戸籍上は男性だが女性として生活する経済産業省の40代の職員が、職場で差別を受けているとして国に処遇改善と慰謝料を求めて東京地裁に提訴した。特例法は性別変更には性別適合手術が必要と規定しているが、職員は健康上の理由で手術を受けられなかった。

 GIDの人たちへの配慮は徐々に進んでいるが、社会の実態と乖離(かいり)している部分も多く、支援団体や弁護士がさらなる法改正の必要性を訴えている。経営者の代理人の南和行弁護士も「裁判を通じて(実態との乖離がある)特例法のあり方を問いたい」としている。【木下訓明、鈴木理之】



朝日
http://www.asahi.com/articles/ASHD77593HD7PTIL02K.html


性同一性障害のフィットネス会員が提訴へ 京都

阿部峻介

2015年12月18日17時50分




 性同一性障害で女性に性転換した京都市の40代経営者が、フィットネスクラブから戸籍上の男性として施設を使うよう求められ人格権を侵害されたとして、運営元のコナミスポーツクラブ(本社・東京)に賠償を求める訴訟を近く京都地裁に起こす。性同一性障害特例法の規定で戸籍の性を変えられない事情があり、「人の生き方を不当に制約する法のあり方も問いたい」と訴える。

 代理人の南和行弁護士(大阪弁護士会)によると、経営者は2009年6月、コナミが運営する京都府内のクラブに男性として入会。12年2月に性同一性障害と診断され、ホルモン剤の投与で身体的特徴も女性に近づき、昨年3月に性別適合手術を受けた。

 日常生活を女性として送る一方、クラブに行く時は化粧を落とし、男性の服装で通っていた。手術を前に女性用の更衣室やトイレが使えるか、インストラクターに確認した。しかし、支店長の意向で「戸籍上の性別も変えないと無理」と伝えられたという。

 障害の診断書と手術の承諾書を支店長に示すと、女性名で会員証を再発行すると言われたが、後日、「本社がだめと言っている」と撤回されたという。さらに「他の利用者が不快に思わないよう男性の格好を」と求められ、「戸籍上の性別に準じた施設利用」に同意する書面への署名・押印を促されたとしている。

 性同一性障害特例法で、戸籍上の性別を変えるには未成年の子どもがいないことが条件の一つとなる。経営者は10代の娘がいて、成人するまでは戸籍の性を改められない。そうした事情も支店長に伝えたが、対応は変わらなかったという。

 経営者側は、コナミの対応は自ら望む性別で人間らしく生きる権利を妨げ、幸福追求権を保障した憲法13条の趣旨に反するなどと主張。慰謝料など約480万円を求める。

 コナミは取材に対し、性同一性障害の人に対しては戸籍上の性別に即していることを基準に対応していると説明。「非常にデリケートな問題。他のお客様の理解も必要」としている。

 性同一性障害の人の施設利用をめぐっては先月、戸籍上は男性だが心が女性という経済産業省の職員が女性トイレの使用制限などで差別を受けたとして、国に賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている。

■息苦しさに「声上げたい」

 「勇気を出して声を上げないと、世の中の意識は変わらない」。経営者は提訴に踏み切る思いを語る。

 小学校に入った頃から、周囲とのギャップを感じるようになった。自分を「オレ」と呼べなかった中学時代。詰め襟の制服を着るのに嫌悪感を覚え、そっても生える体毛に苦しみ、「おかま」といじめられた。

 大学卒業後、高校時代から友人だった妻と結婚。転機は30代後半、生後まもない息子を小児がんで亡くした時だ。「人が生きる意味って……」。悲しみの中で、今ある人生を大切にしようと思い定めた。「変わりたい」。娘は泣いたが、「パパが苦しむのは私もつらい」と言ってくれた。

 周囲に「理解」を押しつけるつもりはない。だからフィットネスクラブでも息を潜めた。でも、戸籍の性を押しつけられるのはおかしいと思う。「少数者が息苦しい社会を放っておけば、いずれ誰にとっても生きづらい世の中になる」(阿部峻介)

■戸籍変更の要件、先進国では異例

 《東(ひがし)優子・大阪府立大教授(性科学)の話》 施設側の戸惑いは理解できるが、他の利用者の動向も見て検討するなど柔軟に対応してほしかった。戸籍上の性別変更の難しさも問題。未成年の子がいると制限されるのは「子どもがショックを受けて家族がバラバラにならないように」という趣旨とされるが、不合理な要件で先進国では異例。当事者には大きな壁になっている。「当たり前の生活」は人それぞれで、自分らしく生きる権利は最大限尊重されるべきだ。その多様さを社会はどう受け止めるべきかを問う訴訟になるだろう。