性的少数者の生徒らを支援へ 文科省が学校向け文書策定

朝日
http://www.asahi.com/articles/ASH325KPFH32UTFK00J.html
性的少数者の生徒らを支援へ 文科省が学校向け文書策定
 文部科学省が、同性愛者など幅広い性的少数者への対応の必要性を明記した文書を学校・教育委員会向けにまとめた。これまで、国の対応は法律上の定義がある性同一性障害に限られていたが、学校現場でより広範な性的少数者への支援が進む一歩になりそうだ。

 性的少数者については、性同一性障害に限らず、同性愛者や両性愛者などを含めた全体がいじめの対象になりやすいとされ、自殺対策の観点からも、専門家や当事者団体が学校での早急な対応を求めていた。

 文書ではまず、性同一性障害の子どもは「自己肯定感が低くなっている」「(性同一性障害などであることを)隠そうとし重圧を感じている」と解説し、「不登校自傷行為自殺念慮(自殺への思い)に及ぶこともある」とした。

 その上で、こうした悩みは「性同一性障害の児童生徒だけでなく、その他の性に関して少数派である者にも共通する」と明記。同性愛者や性分化疾患にも言及して「性的少数者の内実は多様だ」と指摘し、教職員に「用語や詳細な分類にとらわれず、まずは悩みや不安を聞く態度」を求めた。

 具体的な支援策としては、人権教育の年間指導計画に位置づける▽校内研修や職員会議で取り上げる▽一方的な調査や否定をしない▽保護者に隠していたり保護者が受容していなかったりする場合に注意する――などを提案している。

 この文書は性同一性障害などの児童生徒への対応について、文科省が専門家の意見を聞いて「学校で具体的な支援を検討する際の参考」としてまとめられた。年度内に公表される予定だ。(二階堂友紀)




朝日
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11629375.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11629375
多様な性、学校から支援 文科省、人権教育のテーマに
文部科学省性同一性障害に加え、同性愛者など、より幅広い性的少数者の児童・生徒の支援に乗り出す。性的少数者のいじめや自殺の問題は、専門家から再三指摘されてきたが、学校現場での対応は遅れていた。同省が人権教育の課題と位置づけることで、支援が動き出す可能性がある。


 文科省が同性愛者など多様な性的少数者への支援の必要性を明記した文書はもともと、性同一性障害の児童・生徒への支援策として検討されていた。しかし、専門家や当事者団体から、より多様な性的少数者を対象とすべきだとの指摘が相次いだこともあり、「その他の性に関して少数派である者(いわゆる性的少数者)」と盛り込まれた。

 これまで国の具体的な施策は、2004年施行の性同一性障害特例法で法律的に定義された、性同一性障害に限定されてきた。02年の人権教育・啓発に関する基本計画や12年の自殺総合対策大綱で、「同性愛」「性的マイノリティ」に言及されたが、具体的な取り組みは進まなかった。

 今でも政府・与党内では、伝統的な家族観を重んじる立場から、同性愛などの問題を論じることに消極的な意見が根強い。世論の合意形成も進んでいるとは言えない。

 一方で専門家や民間の調査では、性的少数者のいじめや自殺の問題が繰り返し指摘されてきた。当事者団体が約600人を対象にしたインターネット調査では、性的少数者の7割が学校時代にいじめに遭い、3割が自殺を考えた、という結果も出ていた。

 専門家や当事者は文科省や国会議員に、性的少数者への教育現場での支援を粘り強く働きかけてきた。海外でも同性婚を法的に認める流れがある。こうしたなか、東京都渋谷区が先月、同性カップルに結婚相当と認める証明書を発行する方針を表明、日本でも政治課題とする芽が出てきた。

 今回の文科省の対応はその流れの一環として位置づけられる。性的少数者がいじめや差別に苦しんでいる現状をとらえ、人権教育の課題として位置づけることで、学校現場の取り組みを促そうとしているのだ。

 下村博文文科相は2日の衆院予算委員会で、性的少数者について「教職員が正しい知識を持ち、子どもたちのいじめや自殺の未然防止を進めるのは重要だ」と述べ、学校現場における支援の必要性を明言した。

 その上で、文科省ではこれまで「性同一性障害『等』」という表現を使ってきた、と説明。「性的少数者全体ではなく、ごく一部を指摘するように聞こえるということなら、文言については検討したい」とし、具体的な施策の前段として、政府で用語の統一に取り組む必要性があるとの認識を示した。民主党西村智奈美氏の質問に答えた。

 (二階堂友紀)


 ■<考論>教職員への研修急げ

 日高庸晴・宝塚大看護学部教授(医療行動科学) 同性愛者・両性愛者の男性の66%が自殺を考えたことがあり、自殺未遂のリスクは異性愛者の6倍に達するとの調査結果をまとめており、学校現場での対応は待ったなしだ。しかし、同性愛を性同一性障害の延長線上の概念と誤解している人が多いなど、教職員全体への啓発は遅れている。そればかりか、性的指向を嘲笑の対象にするなど、一部の教職員の言動で傷つく子どもも少なくない。まずは全ての教職員が正しい知識と対応を身につけられるよう、学校現場での研修を急ぐべきだ。