性同一性障害:解雇、自殺の家族 遺族年金求め国提訴へ

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性同一性障害:解雇、自殺の家族 遺族年金求め国提訴へ
毎日新聞 2014年03月29日 08時30分

 山口県岩国市の中古車販売会社に勤務していた20代の女性社員が2009年に自殺したのは、性同一性障害GID)を理由に退職を強要されたストレスなどが原因として、遺族側が国を相手取り、遺族補償年金を不支給とした岩国労働基準監督署の処分取り消しを求める訴訟を週明けに広島地裁に起こす。遺族側の代理人によると、GIDを巡る自殺での行政訴訟は全国で初めてとみられる。

 訴えるのは、岩国市在住の女性の母親(60代)。

 訴状などによると、女性は07年4月、同社にパート従業員として雇用された後、08年8月、正社員として採用。その後、自分がGIDである事実を職場で隠すことに苦痛を感じるようになり、同年11月上旬、同僚らにリストカットの経験なども含め告白した。

 これに対し、会社側は同月下旬、GIDには触れず、「リストカットの事実を伝え恐怖心をあおり、職場の風紀を乱した」などの理由で解雇した。女性は解雇されるまで退職を強要され、解雇通知を受けた頃にうつ病を発症。09年1月、「皆さん、ありがとうございました。そしてさよなら。迷惑かけてすみません」という遺書を残して自宅で自殺したという。

 女性の母親はGIDの告白をきっかけに退職強要などを受け、うつ病を発症して自殺したと主張し11年8月、岩国労基署に労災として遺族補償年金の支給を請求した。しかし、同署などは「自殺は業務に起因したものではない」として請求を棄却した。

 これに対し、原告代理人の生越(おごし)照幸弁護士(大阪弁護士会)は「自殺はGIDへの偏見による違法解雇などが原因で、業務と因果関係がある」としている。

 GIDなど性的マイノリティーを巡っては、12年8月に改定された国の自殺総合対策大綱が「自殺念慮(願望)の割合が高い」と指摘。その背景に無理解や偏見があるとして、「理解促進の取り組みを推進する」と明記している。【玉木達也】