性同一性障害:悩み相談して 唯一の医師NPO、手術可否を判定

http://mainichi.jp/kansai/news/20111105ddf041040032000c.html
性同一性障害:悩み相談して 唯一の医師NPO、手術可否を判定

◇関西の大学病院、治療休止で
 心と体の性別が一致しない性同一性障害GID)により悩みを抱える人たちの間で、医師らでつくる大阪市NPO法人「関西GIDネットワーク」が駆け込み寺になっている。GIDは全国で約1万人いるといわれるが、関西では大学病院が治療を相次いで休止。対応に取り組む医師のNPOとしては全国唯一で、性別適合手術の可否などを判定している。昨年11月の開始以来、1年間で判定件数は127件に上る。【高瀬浩平】

 GIDネットは06年に設立、昨年7月にNPO法人になった。中心メンバーは精神科医や形成外科医、産婦人科医ら11人。GIDを診断できる医師を養成する講座も開いている。

 GIDの治療は、心身の両面で複数の診療科の連携が必要。しかし関西では、実績があった関西医科大が昨年12月、大阪医科大が今年1月、医師の退職などを理由に判定や手術を休止した。このため、相談先を失った当事者がホルモン剤を個人で輸入したり、手術費が安いタイに渡航するなどしてトラブルになるケースも起きた。

 GIDネットの判定会議では、日本精神神経学会ガイドラインに照らし▽別の障害や精神疾患GIDと誤診していないか▽成育歴や家庭環境に問題はないか▽未成年の場合は親の同意があるか▽結婚歴や子供の有無−−などをチェック。治療方針を決め、手術する場合は連携する民間医療機関に紹介する。

 男性として生まれ、性別適合手術を受け、戸籍上も女性になった大阪市の40代は「GID治療は一生をかけた問題なのに、信頼できる医師を見つけるのが難しい。GIDネットがなければ、精神的に不安定になっていたかもしれない」と話す。

 医師でGIDネット理事長の福田亮さん(60)は「悩まずに気軽に相談してほしい。安全な医療を提供したい」と話す。問い合わせは事務局(06・6346・0569)。

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 ■ことば

 ◇性同一性障害GID
 精神科医によるケアの他、ホルモン療法や性別適合手術などで、体を心の性別に合わせる治療が行われる。障害のため家庭や学校、職場でいじめや嫌がらせを受けたり、進学や就職、結婚などで悩みを抱える当事者もいる。03年に性同一性障害者性別取扱特例法(GID特例法)が成立、本人が望む性別への戸籍変更が可能になった。関西GIDネットワークによると、治療方法の判定は大学病院が行うケースや、クリニックが単独で判定したり、別々の医療機関の医師らが連携して行うこともある。

毎日新聞 2011年11月5日 大阪夕刊