4月からの性別適合手術 3施設で保険適用

東京新聞 2018.1.9
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201801/CK2018010902000104.html
4月からの性別適合手術 3施設で保険適用


 心と体の性が一致しない性同一性障害GID)の人への性別適合手術に対する公的医療保険の適用を巡り、厚生労働省は一定の基準を満たす医療機関で手術を行う場合に限って対象とする方向で検討に入った。四月に保険適用が始まる際には、岡山大学病院(岡山市)など三施設程度が対象となる見通しだ。
 厚労省GID学会(理事長・中塚幹也岡山大大学院教授)への取材で分かった。
 現状では、岡山大病院のほかに、札幌医科大学病院(札幌市)と山梨大学病院(山梨県中央市)が基準を満たしている。厚労省は、ほかにも保険の対象となり得る医療機関がないか、調査を進める。
 一定の技術や体制を備えた医療機関で安全に手術を受けてもらう狙い。形成外科や泌尿器科産婦人科などが一体となり治療できる環境や入院施設、手術を担当する麻酔科医がいることが条件となる見通しだ。GID学会は専門的な知識や経験がある医師を育成する認定医制度を二〇一五年に導入した。
 厚労省は一月、中央社会保険医療協議会中医協)に案を示し、二月上旬に保険適用条件などを公表する予定だ。
 日本精神神経学会の調査によると、一五年十二月末時点で、国内の二十六医療機関を受診したGID患者は約二万二千人。厚労省によると、性別適合手術を行う国内の医療機関数や、手術を受けた患者数の統計はこれまでにないという。
 保険適用を機に、性別適合手術の件数や患者の年齢、合併症の割合をフォローする体制をつくる。手術後の満足度などのデータも蓄積し、治療の安全性や質の向上を目指す。
 GIDの当事者で、名古屋大学病院でGIDの人の専門外来を担当する松尾かずな助教泌尿器科)は「手術は合併症を伴うことが多く、経済的負担から治療をやめる例もある。医師が責任を持って治療する体制がつくられることに意義がある」と保険適用に向けた検討状況を評価した。