境界を生きる:同性愛のいま/2 結婚に法の下での平等を

オバマ演説、「兄弟姉妹」でなく「同胞」と訳したあたり、丹野記者、私の翻訳も参考にしてくれたかも。
と勝手に解釈して自己満足。



http://mainichi.jp/feature/news/20130219ddm013100024000c.html
>境界を生きる:同性愛のいま/2 結婚に法の下での平等を
毎日新聞 2013年02月19日 東京朝刊

 ◇生活、さまざまな不利益 法整備願う、式決意のカップ
 今春、1組のレズビアン(女性同性愛者)のカップルが、東京ディズニーシー(千葉県浦安市)内のホテルで結婚式を挙げる。会社員のひろこさん(35)と、パートの東小雪さん(28)。大好きなミッキーマウスの祝福を受け、式の後にはともにウエディングドレス姿で園内をパレードする。その日を思い浮かべながら、一緒に式の準備をする時間が、2人にはいとおしい。

 日本では法律上、結婚できるのは男女のカップルだけ。婚姻届は出せず、式はセレモニーに過ぎない。それでも2人が式にこだわるのには理由がある。

 東京都内で一緒に暮らし始めて1年になろうとしていた昨年春、小雪さんがインフルエンザをこじらせ発作を起こした。救急車を呼んだひろこさんは、駆けつけた隊員に聞かれた。「お友達ですか」

 「はい」と答えれば、付き添いを断られるかもしれない。でも、パートナーだと言えば救急隊員は混乱するだろう……。とっさの判断でうそをついた。

 「姉です」

 法律で夫婦と認められない同性カップルには、「結婚」生活を営む上でさまざまな不利益が生じる。給与の家族手当や、税の配偶者控除は受けられない。財産の相続も、生命保険の受け取りもできない。パートナーが事故に遭った時、医療行為への意思決定に関与できない。個人情報の保護を理由に、病状さえ教えてもらえないこともある。苦肉の策として、年下の人が年上の人の養子になる形で法的関係を結ぶカップルもいる。

 ひろこさんとの関係について親の理解を得られていない小雪さんは、式を挙げると決めた後「もしもの時は財産をすべてひろこさんに渡してほしい」と遺言を書いた。

 ディズニーシーで式を挙げれば、従来考えられていなかった「女性と女性の結婚」を、多くの来園者が目にすることになる。「私たちの結婚式が、同性カップルの法的保障に光が当たるきっかけになれば」と、2人は願う。

     ◇

 同性カップルの結婚(同性婚)は01年、オランダで初めて認められた。結婚に近い制度を持つ国も合わせると、今では20カ国を超えている。欧米では、他人の生き方の自由を尊重する土壌があり、受け入れやすいようだ。

 日本でも、同性愛者らでつくる「特別配偶者法全国ネットワーク」が、国に法的保障の充実などを求めてはいる。だが、法整備が動き出すまでの盛り上がりはまだない。
 同性婚に詳しい二宮周平立命館大教授(家族法)は「日本人は近年、少数派の人が何に困っているかに無関心になっている印象がある。価値観が対立する事柄について、政治家が臆病になり主導しようとしないのも、運動が広がらない大きな理由だ」と語る。

 だが、そんな風潮にもわずかながら変化の兆しはある。

 東京都中野区議の石坂わたるさん(36)は一昨年の区議選で、自身がゲイ(男性同性愛者)であることを公表して初当選した。

 パートナーとともに家探しをした際、大家の理解が得られず苦労した。やっと家を見つけた後も「なぜゲイのカップルが入居した」と、住民から苦情が出たこともある。

 当選後、区民から同様の悩みが多く寄せられたのを機に、区に改善を働きかけた。その結果、家探しが難しい高齢者などと業者の仲立ちをする区の支援事業の対象に、同性カップルが加わることになった。

     ◇

 「同性愛の同胞が、法の下で平等に扱われるようになるまで、私たちの旅は終わらない。なぜなら、私たちが本当に平等に創造されたのだとすれば、互いの愛もまた平等でなければならないからだ」

 米国のオバマ大統領は1月21日、2期目の就任演説でこう訴えた。日本の旅は、まだ始まったばかりだ。【丹野恒一】=つづく