性同一性障害:自殺未遂・自傷、経済状況悪化で再上昇

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性同一性障害:自殺未遂・自傷、経済状況悪化で再上昇
毎日新聞 2012年10月12日 東京朝刊

 心と体の性の不一致に苦しむ性同一性障害10+件の人たちが自殺を図ったり自傷行為をしたりする率が、リーマン・ショックで世界経済が落ち込んだ08年以降、上昇に転じ、社会的認知が進む以前のレベルに逆戻りしていることが、岡山大の調査で分かった。性同一性障害の悩みに加え、誤解や偏見からリストラの対象にされやすいなどの経済的な要因が追い打ちをかけているとみられる。(13面に「死なせない−自殺防止最前線」)

 岡山大病院は性同一性障害に関する国内最大の医療拠点。調査は、院内にジェンダークリニックが開設された98年から昨年までの14年間に受診した1452人を対象に初診時、自殺未遂や自傷行為の有無を尋ねた。

 自殺未遂や自傷は、クリニック開設翌年の99年は50%が経験していたが、戸籍上の性別変更を認める特例法が03年に制定されると、翌年から下降に転じ、07年に9・9%まで低下した。だが経済状況悪化を受け、08年から再び上昇。10年に約40%まで逆戻りした。自殺を考えたことがある人も、99年の80%から07年には約31%まで下がったが、10年には約60%に戻っていた。

 同大学の中塚幹也教授(性同一性障害学会理事長)によると、処方したホルモン薬が切れても受診できなかったり、手術をあきらめる人が、ここ数年で増えているという。【丹野恒一】