思春期の遅延

the transgender childより
P204-209
(訳 by AJ)
思春期の遅延
トランスジェンダーの子どもの親たちは、生まれの性別の思春期の望ましくない結果を予防するために、子どもたちの思春期の開始を遅延させようと望むかもしれない。思春期の遅延はまた、トランスジェンダーとしてのアイデンティティを表明し始めた子供の発育を停止させる手段であり、子どもに一体に何が起きているのか理解する多摩の時間を稼ぐことになる。
 思春期を遅延させる薬物の医学用語はGnRHインヒビター、ないしはGnRHアナログである。多くの家族は、この薬剤を「ブロッカー」と呼んでいる。GnRHインヒビターは、男女どちらの子供にも投与できる。この薬剤は、思春期のホルモンの新たなる急増を抑え、効果的に子どもの思春期発育を抑制する。この遅延は完全にもとどおりが可能なものである。もし、子どもがGnRHインヒビターの使用を中止すれば、数年後の使用の後であっても、約6カ月で、身体は本来の発育を再開し、これまでの発育上の遅れを取り戻していく。薬剤の中止の後は、子どもの発育は最初は遅れているが、最終的には追いつく。身体の変化は、本来の進展を再開し、あたかも停止などなかったようになる。
 米国では、GnRHインヒビターはトランスジェンダーの子供に対して長くは使われてはいないが、オランダでは、この薬剤の使用で多くの成功をしている。オランダは、全ての人に対して、ヘルスケアへの国民保険がある国だが、反対のジェンダーの子供の治療への確立したプロトコールがある。これらの薬剤は、米国では過去30年の間、「思春期早発症」と呼ばれる、思春期が不適当に早く始まる子どもたちに対して、適当な年齢まで思春期を遅延させる目的で用いられてきた。この薬剤が用いられた、オランダとアメリカの子供たちのすべてのケースにおいて、人間の身体に対して、思春期を遅延させることは、安全ではないという徴候は見られていない。さらに思春期の遅延は生殖機能に明白な影響はなく、子ども時代のこの薬剤を投与された人々の子供に、奇形の増加をもたらすということもない。
 ボストンこども病院のジェンダーー・マネジメント・サービスのNorman Spack医師によれば、トランスジェンダーの子供に取り組む、国際的に働く多くの医師の間では(米国、オランダ、イギリス、ベルギー、ノルウェー)、性別違和のある者たちへ心理テストを用いての初診時スクリーニングを標準化することへの同意があり、トランスジェンダーの子供を確定診断している。このことは、全ての医療施設が同様のスクリーニングを実施し、統計データを集積し、同意に基づくプロトコールを改善することを、より確実にするだろう。初診時スクリーニングがより標準化するにつれ、医師たちは、確定診断されたトランスジェンダーの子供たちで、成長につれジェンダーアイデンティティが変化したり、治療を求めたことを後悔するものは、ごく少数であると統計が示すであろうことを確信し始めている。
 Tannerステージ2に達した、12,13歳の若いトランスジェンダーの子供たちが、16,7歳の生まれの性別の思春期が進んだ年齢になるまで待たされる代わりに、ホルモン療法の開始を許可されるならば、多くの苦痛が予防できる。さらにこのような早期治療のガイドラインは、たとえ高価だとしても、保険会社に対して最も効果的な治療の保証をするようにとの、説得に用いることが可能だ。さらにはWPATHのような組織が作成するガイドラインへも影響を与えるだろう。


思春期の遅延に関して考慮すべきこと
GnRHインヒビターは身体の発育を停止し、思春期の発達の加速を予防し、子どもの身体を思春期前のままに維持する。その結果、治療の期間、子どもの身長は他の子どもより有意に低く、見かけは幼くなる。しかし、銘記すべきは、発育の遅い子供は多くいることだ。中学や高校のホールを歩けば、子どもたちの発育段階の幅が広いことが分かるだろう。
 思春期の遅延に関して、考慮すべき他の点は、知的発育についてだ。GnRHインヒビターを使用している間、子どもは、本来であれば起こる、身体でのホルモン活動の増加にともなう知的発育を経験しない。しかし、これは単なる遅延であり、永遠に続く状態ではない。知られている限り、これらの薬剤の投与を選択することは、発育への永久的な影響はない。
 一方で、エストロゲンとテストステロンが永久的ないし半永久的変化を身体発育にもたらすことを考慮することも重要である。トランスジェンダーの子供に思春期を遅延させる薬剤を投与しないことを選択した場合には、子どもが将来手術を受ける可能性を劇的に高めることになる。このことは、生物学的男性にとっては、より真実である。なぜなら、テストステロンの身体構造への影響は、エストロゲンより、さらに永久的なものだからだ。
 このことを説明しよう。エストロゲンによる変化を身体が体験すると、乳房が肥大し、月経が開始し、皮膚が柔和になり、脂肪が臀部などの部位に配分される。これらの変化は人を「女性化」し、その人を女性だと認識させるようにする。テストステロンによる変化を身体が経験すると、声は低くなり、体毛の成長のパターンがひげも含めて永久に変化し、棟、腕、背中、肩ががっしりとなり、喉仏が発育し、顔の骨構造が変化する。これらの変化は人を「男性化」し、その人を男性だと認識させるようにする。テストステロンの効果の多くは、逆戻りできない。このことは、いったん男性化した身体を、何度も外科的手術を施さない限りは、たとえエストロゲン投与をした後でも、完全に女性だと見えるようにすることを困難にする。
 テストステロンはそれほど強力なホルモンなので、自然な女性思春期を経過したのちの体でも、テストステロンを投与すれば、男性としての見かけに容易に変更することができる。その結果できる人物は、胸のある背の低い男性かもしれないが、テストステロンはその人に、幅広く男性として認識される変化を与える。乳房は容易に隠すことができるし、のちに、一回の手術で外科的に切除することも可能だ。男性の思春期を経過した身体は、エストロゲンを投与し、いくらか変化させることもできる。しかし高価な手術が顔の再形成や、喉仏の切除に必要になるかもしれない。広範囲な脱毛や声の再訓練もまた必要となる可能性がある。思春期後の身長や骨格に対してはなすすべがない。結果として、思春期遅延薬剤投与を受けなかったトランスジェンダー女性(MTF)の多くは、永遠にトランスジェンダーとして認識され、女性としては認識されない。


 わが子は3年にわたりホルモン療法をしました。彼女はさらに顔の治療を受け、来年にはSRSを受けようと考えています。しかし出費は巨額です。彼女が若い時に、ブロッカーが使えていたらと思うのです。-22歳のMTFの親


さて、目的は、いつも反対の性別に「パスする」事だけとは限らない。しかし、トランスジェンダーの親として、この時点で選択する医学的治療は、子どもたちの未来に強い影響を持つ。子どもが思春期を遅延することや反対の性ホルモンの使用をすることを許すことは、外見上の理由で子どもたちが差別されない可能性をとても高めることは確かだ。このことは、世間の安全性だけでなく、就労の機会も高め、個人の尊厳や身体イメージの向上にも寄与するのだ。

The Transgender Child

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