夜と霧

名著であり、日本で売れているのはその「夜と霧」というロマンチックなタイトルによるところも多いと思うが。
個人的意見としては、この邦訳は、訳者の思い込みが強すぎるものだと思う。
この本のすごみは、強制収容所に収容されながらも、あくまで理性的でありつづけ、その記載も感情に流されることなく淡々としていることにあると思う。
原題の「心理学者、強制収容所を体験する」という、無味乾燥のタイトルが、著者のスタイルであり、「夜と霧」ではロマンティックが過ぎると思う。


内容的に特に印象的だったのは、
収容者側にも、虐待を行わないものがいた一方で、
被収容者側にも、暴力を同じ被収容者に振るうものがいたという、指摘。


>まともな人間だけの集団も、まともでないはない人間だけの集団もない。


>人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りを口にする存在でもあるのだ。

夜と霧 新版

夜と霧 新版