境界を生きる:性分化疾患・決断のとき/番外編 「IS」 ドラマに反響続く


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境界を生きる:性分化疾患・決断のとき/番外編 「IS」 ドラマに反響続く
 ◇理解への期待、新たな偏見への不安 BSジャパンで再放送中
 染色体やホルモンの異常が原因で男女をはっきりと区別しにくい「性分化疾患」をテーマにしたドラマが今夏、初めて放送された。「当事者の現状を伝えたい」と、デリケートなテーマに挑んだスタッフらの奮闘が伝わり、番組ホームページの掲示板には今も共感や続編制作を求める書き込みが続いている。【丹野恒一】

 テレビ東京系で7月から9月まで放送された「IS(アイエス)〜男でも女でもない性〜」。原作は漫画雑誌「Kiss」(講談社)に連載された同タイトル作。「IS」は性分化疾患を指すことのある「インターセックス」を略した造語だ。

 性分化疾患がありながらも明るい家庭で育った春(福田沙紀さん)は、進学した高校で、どこか陰のある美和子(剛力彩芽さん)と出会う。彼女もまた別の性分化疾患で、差別を恐れる母親から内向きの愛を注がれたために……。

 「普通って何なんだろうと考えさせられた」「毎回、娘と正座して見た」「ありのままの自分を隠さない大切さを知った」。視聴者の反応はどれも真剣だった。

 テレビ東京の中川順平プロデューサーは「性分化疾患をしっかりとらえるのは難しく、霧の中を手探りするようだった。しかし、偏見にとらわれない感想が若者からも多く寄せられ、挑戦したかいがあった」と話す。

 主人公と同じく高校生活を送る性分化疾患の当事者らは、理解の広がりへの期待と新たな偏見が生まれはしないかという複雑な気持ちで放送を見守ったようだ。

 卵巣も精巣もある東日本の高校2年の女子生徒(16)は、ドラマが始まってから、付き合いのない同級生から突然声をかけられ、戸惑ったという。「ドラマと同じ病気なの?」とストレートに尋ねられたこともある。

 「病気を知ってもらえるのはいいけれど、中途半端な知識だけが広まるのも不安」と感じた。性的少数者との付き合い方を書いた実用本を用意し、渡すことにした。約10人に読んでもらい、「大変なんだね。頑張って」と励まされたこともあるという。

 原作の連載時に協力した性分化疾患自助グループ「三毛の庭」代表の足立みのりさん(55)は放送中、母親からメールをもらった。これまでお互い、疾患については触れないようにしてきたが「成長期に心が揺れ動いたあなたを見るようで、親として考えさせられています」とあり、「救われた」という。

 足立さんは「生身の人間が演じるドラマだからこそ、より現実味を持って伝わったと思う。種はまかれたので、あとは社会がどんなふうに花を咲かせるかだ」と考えている。

 「IS」は10月からBSジャパンで金曜午後11時から放送中。

毎日新聞 2011年10月23日 東京朝刊