性同一性障害:手術ミスで和解 説明の不備認める

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100325k0000m040070000c.html
性同一性障害:手術ミスで和解 説明の不備認める
 性同一性障害GID)と診断され、大阪医科大付属病院(大阪府高槻市)で乳房切除手術を受けた立命館大大学院生の吉野靫(ゆぎ)さん(27)が、手術ミスで皮膚が壊死(えし)したとして同病院に約3300万円の損害賠償を求めた訴訟が京都地裁で和解した。吉野さんが24日、京都市内で記者会見し、発表した。病院側が説明の不備を認めて慰謝料330万円支払う。

 訴訟資料によると、吉野さんは02年から、同病院専門外来(ジェンダークリニック)に通院。06年5月に形成外科で手術を受けた後、縫合部が壊死し、07年3月に提訴。手術に関する説明義務違反や過失の有無、精神科と形成外科の連携が十分だったかが争点だった。

 和解は吉川慎一裁判長の勧告によるもので、病院側が両科の連携についての改善点を説明することや、吉野さんが医師らに対して意見陳述する場を設けることも盛り込まれた。

 吉野さん側によると、GID医療を巡る初の訴訟で「勝訴的和解」と評価している。吉野さんは「受け入れ病院が少ない上、技術的にも海外などと比べると劣っている現状を改善するきっかけになったと思う」と話した。

 病院側は「コメントはしない」としている。【熊谷豪】

毎日新聞 2010年3月24日 20時44分


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100324-OYT1T00943.htm
医療ミスで和解「意見や思い語る場」設置も
 性同一性障害GID)との診断に基づいて行われた乳房の切除手術で医療ミスがあったかどうかが争われた訴訟が京都地裁であり、被告の大阪医科大(大阪府高槻市)が、原告の立命館大の大学院生(27)に330万円の慰謝料を支払うことで和解が成立した。


 和解条項には、同医科大の医師らを集め、院生が意見や思いを語る場を設けることが盛り込まれた。医療過誤を巡る訴訟の和解で、こうした措置は珍しいという。

 院生は2006年5月、同医科大付属病院で乳房の切除手術を受けたが、皮膚の一部が壊死(えし)したとして翌年3月、3323万円の損害賠償を求めて提訴した。

 和解条項では、「被告は、壊死のリスクに関する術前説明の表現にかえりみるべき点があった」としたうえで、同医科大が院生に対し、同病院内で1時間、GIDの手術に関する留意点や思いを語る場を設けること、チーム医療の改善点を院生に書面で知らせること――などが盛り込まれた。

 和解は19日に成立。院生は24日、京都市内で記者会見し、「医療の改善につながる勝利的な和解だ」と語った。

(2010年3月24日20時21分 読売新聞)


時事

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010032401034
性同一性障害手術訴訟で和解=慰謝料330万、改善点も通知−京都地裁
 性同一性障害と診断を受け、乳房の切除手術を受けた立命館大の大学院生吉野靫さん(27)が医療ミスで皮膚が壊死(えし)したとして、大阪医科大(大阪府高槻市)に対し約3300万円の損害賠償を求めていた訴訟は京都地裁で24日までに、病院側が慰謝料330万円を支払うことなどで和解が成立した。
 和解は19日付で、ほかに、病院側が改善点を書面で通知し、吉野さんが病院に対して意見陳述する場を設けることなどが盛り込まれた。
 吉野さんは24日記者会見し、「性同一性障害の大学病院における正規医療の改善に向けて大きく踏み込むような形で勝利できた。患者の求めるものは多様で、医療側が本人が望む以上の介入をすべきではない。認識を改めるべきだ」と話した。(2010/03/24-21:02)


http://www.asahi.com/health/news/OSK201003240174.html
朝日
性同一性障害、手術ミスで和解 大阪医大が慰謝料2010年3月25日0時8分

 心と体の性が一致しない性同一性障害GID)と診断され、大阪医科大付属病院(大阪府高槻市)で2006年に乳房の切除手術を受けた立命館大大学院生のヨシノユギさん(27)が、手術のミスで皮膚が壊死(えし)したうえ精神的ケアも不十分だったとして、大阪医大に約3300万円の損害賠償を求めた京都地裁の訴訟で和解が成立した。今月19日付。

 和解は、大阪医大側が手術のリスクについて説明する際の表現に省みるべき点があったことなどを踏まえ、慰謝料330万円を支払う▽原告は、同病院が取り組んできたGID治療の意義を否定しない▽5月末までに原告が病院の医療スタッフに意見を述べる機会を設ける――などの内容。

 ヨシノさん側によると、日本精神神経学会が定めるGIDの診断・治療ガイドラインに沿って専門外来を設置している医療機関での手術を巡る訴訟の和解は初めて。

 ヨシノさんは24日、京都弁護士会館で会見し、「意見を述べる機会など、重要な要求が達成できた」と和解成立の意義を話した。GID手術は健康保険が適用されず、診療報酬の対象にもならないため実施する医療機関が増えない。ヨシノさんは診療待ちが2〜3年に及ぶ現状に言及し「GID医療の厳しさに関心を持って欲しい」と語った。

 訴状などによると、ヨシノさんは子どもの頃から自身の体に強い違和感を抱き、03年、同病院でGID診断を受けた。06年5月20日、左右の乳房を切除する手術を受けたが、間もなく縫合部が壊死した。裁判でヨシノさん側は「手術前に壊死の危険性を何度も確認したが執刀医は否定した。治療チームの精神科医との連携も不十分だった」などと主張。大阪医大側は「精神科医はいつでも呼べる状態にあり、連携に問題はなかった」などと反論していた。

 GID手術では通常、外科医や産婦人科医などのほか精神科医を交えたチームを組み、手術や術後のケアを担当する。手術によっては高度な技術が求められるため、実施する医療機関は全国で数カ所しかない。(中川竜児)