「身体疾患の精神科医療」

「身体疾患の精神科医療」を読む。
各種身体疾患にともなう、精神症状、精神状態への精神科医の行うべき、精神療法、薬物療法が、詳細かつ具体的に記述されており、大変勉強になった。


この本を読んで思ったのだが。
性同一性障害の治療というものは。
ハリーベンジャミンの「心でなく体を変える」というパラダイム転換により、もっぱら、身体治療にその主眼がおかれ、精神科医は身体治療に進むべきものを選抜するゲートキーパーになってしまった。
そのパラダイムにおいては、心と体は、二項対立的なものであり、身体治療はもっぱら、身体科の医師により行われる。
で、手術、ホルモンなどの身体治療において、精神科的問題が起こると、それは身体治療の前段階における、精神科医による、対象患者の選抜に問題があったということになる。
その結果、身体治療に進めるものは、極論すれば
「政情不安定な東南アジアの国に単身乗りこみ、家族や友人から離れた孤独の中、言葉も通じず、口に合わない食事を我慢し、苦痛に耐え抜き、3週間サバイバルできる」という、「ランボー怒りのアフガン」レベルの精神力を持たなければいけないこととなる。
しかし、これはやはり、非現実的な話で。
ホルモン療法や手術を行えば、精神症状や精神状態の変化は当然起こりうると予測するのが妥当な考えであり、そういった症状にも精神科医リエゾンして対応していくというのが、望ましい体制であるのではなかろうか。


とはいえ、ブログでこうやって書くだけだと簡単だが、いざ実行するとなると何かとハードルが高い話ではあるが。

身体疾患の精神科医療―臨床ガイド

身体疾患の精神科医療―臨床ガイド