1.25の朝日新聞島根のニュース。
http://d.hatena.ne.jp/annojo/20070126/p2
これまでは「性同一性障害が精神疾患なのはおかしい」という主張はたくさん聞いてきたが。
「性同一性障害で、精神障害者保健福祉手帳がもらえないのはおかしい」というのは聞いたことがなかったので、かなりおどろいた。
そこで、可能かどうか検討してみた。
まず、精神障害者保健福祉手帳の対象は、知的障害者を除く精神障害者。
「精神障害者」の法的定義は、精神疾患を有するもの、で、
精神疾患とは、ICD-10で精神障害の章に示されたもの。
ICD-10には「性転換症」をはじめとする、性同一性障害が疾患リストに示されている。
よって、疾患としては、法的に精神疾患である、性同一性障害を有するものは手帳の対象となりうる。
次に手帳の対象は、精神障害の状態で、日常生活、社会生活が制限を受ける程度以上のものでないといけない。
具体的に下記項目別に評価する。
そこで、性同一性障害の場合を項目ごとに考察してみる。
1. 食事摂取:ときどき拒食傾向の人はいるが特に問題ないと思う。
2. 清潔保持:問題ない。
3. 金銭管理と買い物:女装間もない場合、「女装グッズ大量買い込み」→「自己嫌悪で全部捨てる」→「また買い込む」ということも時々あるが、普通問題ない。
4. 通院服薬:服薬の必要性はないし、通院も問題はない。
5. 他人との意思伝達・対人関係:対人関係は多少援助を要する場合もある。
6. 身辺の安全保持・危機対応:自傷や自殺企図を繰り返す場合もあり。
7. 社会的手続きや公共施設の利用:性別がばれるのを恐れて利用困難な場合もあり。
8. 趣味・娯楽への関心:問題ない。
ということで、全体の「日常生活の程度」は、平均すれば「普通にできる」になりそう。まあ、無理をすれば「日常生活または社会生活に一定の制限を受ける」にならないこともないかも。
で、結論的には、病状が重い場合は、かろうじて、障害等級3級になる可能性もありか。
ただ、実務的には、障害者手帳発行レベルに病状が重い場合、性同一性障害だけでなく「うつ病」「人格障害」などの他の精神疾患の合併があると診断されると考えられ、そちらの病名での手帳発行ということになりそうな気がする。