サルの性同一性障害

分子精神医学2006年10月号(Vol.6 no.4)の「特集:動物に精神疾患はあるか?」は大変興味深い。
http://www.sentan.com/cgi-bin/db.cgi?mode=view_backno&no=412


その中で、「吉川 泰弘:サル類の精神疾患モデル」という論文がある。
P20-21 に「サルの性同一性障害」という実験の知見がある。


通常、動物のこの手の論文は、「性同一性障害」といいながら、メスがマウンティングしました、みたいな、同性愛行動との混同があるものがほとんどなのだが、これはちょっと違い興味深い。
以下適当に簡単にしながら紹介。


方法
妊娠カニクイザルに、妊娠50日目から出産(150日目)まで、BPAという物質を暴露させる。
このBPAは、接着剤の一種で、エストロゲン作用がある。
正常オス、正常メス、暴露された母から生まれたオス、暴露された母から生まれたメスを比較。


結果
外形の雌雄には影響なし。(オス、メスの体はそのまま)。
以下4つの認知行動が、暴露された母から生まれたオスはメス化。
1. アイコンタクト試験(1分間のアイコンタクト回数)
メスは約20回、オスは13回が20回(暴露)に。
2. 指迷路試験
3. ケージ外への関心
4. 視覚的探索
メスは約90%、オスは10%が90%(暴露)に。


ということで、ここに書いてもよくわからないかもしれないが、(私もよくわからない)、サルでは、アイコンタクト試験、指迷路試験、ケージ外への関心、視覚的探索という、認知・行動にオスメスの性差があるらしい。
でもって、エストロゲン作用のあるBPAの暴露を受けると、体はメス化しないが、認知行動パターンはオスがメス化するということのようだ。


すなわち、それが「サルの性同一性障害」ということのようである。